終わりなき美徳

 もしさ、どんな願いもかなえてくれる本当の魔女がいたら、あたしはこうお願いをする。恋の魔法をかないでって。

 

 世界は悲しみであふれてる。あたしたちは、たったいくつかの町を回ったにぎないけど、それを嫌ってほど思い知らされた。だから、本当は世界の平和を願わなくちゃいけないんだろうけど。やっぱり、あたしは恋のおまじないを優先すると思う。

 

 だからホントは、あの子供みたいな魔女のこと、とやかく言えない。

 

 あたしたちは、みんなどこかしらの点で魔法使いのようなもの。みんな1つぐらい魔法を持っている。だからあたしたちは、こんなに個性豊かでいられるんだと思う。

 でも、たまにその魔法は悪さをして、あたしたちの手にあまるような悲しみを生むこともある。ぎゃくしかりで、手の平からあふれるような幸せを生むことだってある。

 

 あたしたちの美徳びとく悪徳あくとくがそのみなもと

 

 悪徳が悪いとはかぎらない、美徳が正しいとも限らない。

 

 矛盾むじゅんばかりで、ホントのところは誰にも分からない。でもそれを、仲のいい人や、好きな人と話し合えたら素敵すてきだよね。そんな話を、きずりの人としてもずかしくない世界になったら、もっと素敵。たとえ、それで答えが出なくてもね。

 

 なんだか、そんな当たり前のことを知るためだけの旅だった気がするよ。

 

 ……こんな感じだね。あたしたちの物語はひとまずこれでおしまい。だけど、あたしたちの旅はまだまだ終わらない。でもそれは、サンデーとあたしだけの秘密ひみつだよ。

 

 だって、ラブラブな恋は悪徳だらけで、誰かに見せられるようなもんじゃないからさ。恥ずかしがってぐずぐずしてたら、せっかく叶えた魔法が解けてしまいそうだもん。


 だから、あたしは、せいぜい、こっそり恋を爆発ばくはつさせることにするよ。

 

 じゃあね、バイバイ!

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抜け殻の勇者 ~七つの美徳と七つの悪徳、七つの町を巡る旅~ 倉井さとり @sasugari

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