中身の無い抜け殻の鎧と少女の旅。
旅の目的は、この世界でただ一人存在する魔女に会うこと。
ライトな出だしからは想像もつかないほど、物語が後半に向かうにしたがって内容がコアにコアになっていく。
主人公とヒロインの二人はとにかくタフで、とにかく諦めが悪い。旅の中で幾度となく窮地に陥っても、何度も何度も諦めかけても、最後は絶対に諦めずに立ち上がる。読者が正気を疑うぐらいに、絶対に諦めないのだ。
訪れる町にはそれぞれ奇異な特徴があり、その発想力もさることながら、詩と哲学と狂気がごちゃまぜになったような語り口は飛び抜けたオリジナリティを感じる。こんなの読んだことない。
一度引きずり込まれたら終わりで、アリ地獄のように抜け出せない(良い意味で)。
誰にも真似できない独特のファンタジー作品。
最後の町で主人公たちが全てをぶつけ合った後に見た光景が、とても美しく、目から離れない。
中身が空っぽの全身鎧の『私』が金色リンゴのような少女『ミュート』に出会い『サンデー』となり、一人は自身の中身を求めもう一人はいなくなった恋人を探し求め二人の旅が始まります。
この世界に画期的な革命を起こし人々の生活を豊かにした魔女と呼ばれる謎の人物。彼女がサンデーの秘密に関わっているそう判断した二人は魔女の影を求め町を巡っていきます。
この訪れる町が個性豊かでそこに住む住人の個性も豊かというより強すぎてどこか突き抜けています。
セリフの言い回しが発する人物の哲学を感じさせ、一見無茶苦茶なことをって聞こえるセリフでもそこには太い信念を感じさせられ納得してしまいます。
サンデーとミュートの言葉遊びを含んだ軽快なやり取りも面白く、こちらも時々哲学差し込まれ「おぉ!」っとなったり読んでいて楽しいです。
そして何より特徴的と思えるのが、この二人はあくまでも自分達の為に魔女を探し旅をしています。各町が抱える問題を解決する為に旅をしているわけではありません。
自身にかかる火の粉は払いますが進んで問題に首を突っ込まない。解決出来ることはするけど出来ないことは出来ない。
これが本当に旅をしているそんな雰囲気を感じさせてくれます。
この作品を読んだとき各町やその住民が見せる姿に圧倒され魅了されると思います。そして気付けばどっぷりとこの世界に浸ってハマっているはずです。
是非ページを開きこの魅力溢れる世界を旅していただきたいです。