現代ファンタジーの皮を被った私小説

naka-motoo

偽装商品

超現実は現実を超えた異常世界なのかそれともこれ以上ないという現実世界なのか。


異世界ファンタジーとの境界線はどこなのか。


僕は自らにテーマを課して歩き始めた。


どうやらここは僕が住んでる街の駅周辺の飲食店が連なる道に妖精が出没するというプラスアルファの条件が付されたエリアになってしまったらしい。


妖精の姿を僕は想像することしかできないけど、一般受けするのであれば女の子がいいんだろうね。


あるいはかわいらしい男の子か。


焼き鳥屋の横を通ると今時珍しいぐらいに煙を換気扇で外に吐き出すその匂いで客を釣ろうとしていて。


仮にこの匂いの中を妖精が出てきたとしても僕はまったくファンタジーな気分にのめり込めないだろう。


「よ」

「え」


出てきちゃったよ。


「わたしが見えるの?」


僕は、『え』、と声を発してしまった

ことを悔いたけど今はもう立ち直って見ざる聞かざる言わざるを徹底している。


「ねえねえ。わたしの声が聴こえるの?」


かわいらしい声だ。

ほんとのことをいうと、幼いのに少しだけハスキーなこの声室は僕の滅茶苦茶好みではある。


「ねえねえ。わたしに話しかけてくれないの?」


服装もノースリーブの白いワンピースで、足がすらりんと若干のO脚気味で爪先は内側に少し斜めに向けた感じでとてもいい。


肌も演出かと思えるぐらいに透き通るぐらいに白いんじゃなくてほんとにうっすら透き通ってる!


顔は・・・・・・まずは黒髪に目がいくけどその髪の長さとまっすぐ重力にそって下にストレートなんじゃなくてところどころ重力に抗うみたいに、ピン、ピン、って枝毛ほどにもはねてるのがたまらなくかわいらしくて、髪にくるまれたほおやあごのラインは小さくてなめらかで。


でも焼き鳥屋の妖精。


その隣はホルモン焼屋。


さらに隣はシシカバブ専門店でタワーみたいな棒にぐるぐる肉が巻き付けられてテキ屋みたいな兄さんが「一巻き500円だバカが!」って客に怒鳴りつけてる。


現実世界の中でのファンタジーを現代ファンタジーと言うのなら、彼女と◯◯焼屋のどっちが現実でどっちがファンタジーなんだろう。


通りすがりのオヤジさんが言った。


「女の方が現実だ」

「まさか」


僕が反論する前にオヤジさんは行ってしまった。


彼女が現実だとしたら焼屋がファンタジーなのか?そんなわけがないだろう。


「わたし、33だよ。よろしくね♡」


家に、帰ろう。



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