第74話
「どうするんだ⁉」
「どうするもなにも俺たちもともとこんなことしたいわけじゃねえ!」
「それに王子が俺たちを殺そうとしたんだぞ! もう付き合い切れるか!」
収拾をつける存在がいなくなったことで騎士団員たちが混乱して騒ぎ出すが、それを止める存在が王城側から現れた。
――ドシン
大地を震わせながら現れたのは……サイのような魔獣、だがそのサイズはもはや……。
「えっ⁉ なんでこんなところに……」
「あれはまるでドラゴンどころか……神獣じゃ!」
二体の神獣と向き合ったからこそ、あれが偽物だとわかるが、同時にそのサイズと存在感は本物のそれと遜色ないことに驚かされる。
「お久しぶりですねぇ、レインフォース卿。随分と暴れられたもので……」
巨大な魔獣の頭上からそう語りかけてきたのは、第二王子ロキシスだった。
それとほとんど同時に、超巨大なサイの魔獣の周りから先程までアルンが騎乗していたような大柄のドラゴンや魔獣たちが大量に現れる。
その数は百を上回っているだろう。
レインフォースが管理していた数の倍は超えていた。
「どうですか? 私の研究成果に声も出ませんかね⁉ わかりますか! この動物たちはすべて! 私の手で作り上げたのですよ!」
高らかに宣言するロキシス。
応える前にレイリックが俺にだけ聞こえるようにこう尋ねてきた。
「あれもテイマーか?」
「わかってて言ってるだろ……あれはそんなんじゃないよ」
「では質問を変えようか……あれとユキアでは、どちらが優秀なんだ?」
「優劣の問題じゃない。俺はあれを許す気はない」
「そうか。ではこの戦い、決着のようだな」
レイリックの言葉通りだった。
「選びなさいレインフォース卿。これまでの非礼を詫び、我が国に従属し忠誠を誓うか、ここで私の作った実験動物たちに踏み潰されて死ぬか!」
ロキシスは止まらない。
「おっと、忠誠を誓うというのはですね。契約魔法でも、【テイム】なんてちゃちなものでは済ましません。私が直々にその頭を弄くらせていただきますがね!」
そこまで言うと高笑いを始めるロキシス。
そうか。作られた動物たちはそれで言うことを聞いているのかもしれないな。
「【テイム】」
「何を馬鹿な……この動物たちは私が直々に……へ?」
実験動物は正確には二百近くの数に上っていたが、その全てをテイムした。
「なっ⁉ ばかな……⁉ 動きなさい! 私の言うことを! このっ! 動きなさい! 動くのです! はやく!!!」
巨大なサイの頭上で必死に足踏みをして言うことを聞かせようとするが、全て無駄なことだった。
「ええいっ! 動けと言うのがわからないのですか! 使えないやつらなど私の一存で……ぇ?」
それまで一切動かなかったサイが身震いをした。
「待っ……まさか……このまま落ちたら……」
その巨体は王城の三階以上に相当しているし、落ちればただでは済まされないだろうが……。
「やめっ……ああ……おち……あぁぁああああああああああ」
彼を助ける動物たちはそこにはもう、いなかった。
◇
「私は……死ぬのか?」
押し入る形で王城に入り、アルトン=ウィル=ゼーレス国王を捕らえたところだった。
随分老けて見える。
「殺す気はないですよ」
「甘いなユキア。だが生かしておいて意味などあるか?」
「うちの領地、牢みたいなところがなかったし、そこに仕事を生んで雇うには今回の件は丁度いいと思ってな」
「なるほど……元国王がゴブリンの世話になるというのもまあ、一興かもしれんな」
レイリックの言葉に国王以下大臣たちは絶望に顔を染めていた。
宮廷テイマー、コストカットで追放されて自由を得たので未開拓領域に使い魔の楽園を作ることにする~竜も馬も言うことを聞かなくなったから帰って来いと今更言われても……もうエルフと同盟を結んだので~ すかいふぁーむ @skylight
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