星空の地図

雨世界

1 僕たちは、迷子にならないように気をつけないといけないね。

 星空の地図


 プロローグ


 君と一緒に地図を見る。

 それから二人で、冒険に出かける。

 ……まだ見たこともない場所に。

 僕と君の、二人の頭の中にしかない場所に。


 本編


 二人の男の子


 僕たちは、迷子にならないように気をつけないといけないね。


 見上げる夜空には、たくさんの美しい星があった。

 見渡す限りの星空が広がっている。

 僕の隣には君がいて、僕と同じように楽しそうな顔をして笑っていた。

 僕と君の隣には不思議な動物がいた。

 鹿のように見えるのだけど、その頭には一本の角がまっすぐ天に向かって突き出すようにして生えていた。

 体の毛は深い緑色をしていて、四本足の根元には真っ白なふかふかした毛が生えていた。

 その不思議な動物の名前を僕は知らなかった。

 動物は大好きで、動物図鑑を読んだり、ネットで動物のことをよく調べたりしていたのだけど、(遠くの大陸に住んでいる変な動物たちの名前も、僕はたくさん知っていた)その不思議な動物の名前を僕は知らなかったのだった。

 その鹿に似ている動物は、とても深くて澄んだ青色の目をしていた。(よく見ると、その青色の目の中にはきらきらと光り輝く不思議な黄金の粒子のようなものがあった。その目は、まるで小さな星空、あるいは、小さな銀河のようだった)

 そんなとても深くて澄んだ(ずっと見ていると、まるで怖くなるくらいに)青色の目で、不思議な動物を見ている僕の顔をじっと見つめていた。

 その不思議な動物は、やがてゆっくりとその目を僕と君と同じように、首を伸ばすようにして、美しい星空に向けた。

 それからゆっくりと四本の足をおって、大地の上にしゃがみ込んだ。

 僕と君と不思議な動物はそうやって、さらさらという音を立てながら、穏やかで優しい緑色の夜の風の吹く、緑色の丘の上に寝そべって、みんなで一緒に星空をずっと、ずっと眺めていた。


「綺麗だね」と君がいった。

「うん。本当に綺麗だね」と君に向かって、僕はいった。

 すると、君は首を動かして隣に寝転んでいる僕を見た。僕も同じように君のことをじっと見つめた。

 君は、ずっと楽しそうな顔をして、……ずっと、本当に幸せそうな顔をして笑っていた。

 僕の隣で。

 ……僕の、本当にすぐ近くの場所で。(手を伸ばせばすぐ届くくらいに近い場所だ)

「ねえ、僕たち、ずっと、ずっと友達だよね」と君は僕の目を見て、そういった。(君の大きな黒い瞳の中には、まださっきまで見ていた美しい星の光が、きらきらと光りながら、残っていた)

「うん。もちろん」

 とにっこりと笑って僕はいった。

 すると君は「どうもありがとう。君と友達になれて、君と出会うことができて、僕は本当に嬉しい」と僕にいった。

 そんな君の言葉を聞いて、僕と同じだ、と僕は思った。


 僕と君と不思議な動物が見ている美しい満天の星空に、一つの流れ星が流れたのはちょうどそんなときだった。

 星が一つ、大地の上に落っこちたのを見て、僕と君は「星を探しに行こうか?」と言う君の提案を受け入れて、その大地の上に落っこちた一つの星を、二人で一緒に探しに行くことにした。

 そうやって、僕と君の(それから、なぜか勝手についてきた不思議な動物との)二人(と一匹)だけの冒険が、今夜、……始まった。

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