エピローグ

それでも、花は咲かない



 18歳。

 僕は、博士の資格を取った。

 ミハエル先生はピアニストになることを勧めてきたが、僕は断った。当主になるため。

 それからは、父さんの仕事を手伝い、皇帝陛下と共に色々な国を行き来するようになった。父さんは、屋敷の人たちと大喜びしてくれた。

 しかし、中庭に生えた蔓から花は咲かない。



 22歳。

 僕は、妻と出会った。

 とても可愛らしい人で、僕の支えになってくれた。僕も、彼女を愛した。仕事をこなして、彼女との時間も大切にした。

 それから2年後。息子と娘の、双子の父親になった。

 しかし、中庭に生えた蔓から花は咲かない。


 26歳。

 僕は、父さんの跡を継いでアルバート家当主になった。

 もう、父さんの指示はない。僕が、この家を引っ張っていく。

 皇帝陛下は、僕を大変気に入って信頼してくれ、仕事もたくさん増えた。僕は、それを全て取りこぼさないようにこなした。

 しかし、中庭に生えた蔓から花は咲かない。


 41歳。

 僕は、父さんを看取った。

 父さんは、母さんとロゼに会いに行くと言って眠った。最期まで、立派な人だった。

 しっかりお別れをして、中庭に埋葬した。

 しかし、中庭に生えた蔓から花は咲かない。

 蔓は、小さな木になりつつあった。


 52歳。

 僕は、息子に当主を譲る。僕以上に立派な当主になるだろう。娘も、皇帝陛下の元で働いている。

 しかし、中庭に生えた木から花は咲かない。


 きっと、ロゼから見たらいつまでも僕は「子どもなシャロン」なんだろうな。今も、チーズが大好きだし。


 僕は愛する妻と共に、今日も笑って生きている。


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彼女が吐いた優しい嘘は、僕の心に突き刺さる 細木あすか @sazaki_asuka

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