思うこと・・・2

この話は前回の話で書き捨てて終わりにしようと思ってたんですが、よくよく考えたら掘れば結構書ける事あるな、と思い返した次第。


アル中という話で云えば、結構寝酒してる人って多いんですよね。

いわゆる、寝つきをよくするために飲む就前酒。


気持ちはわからんでもないですが、就前酒は不眠をより悪化させるだけなのでお勧めしません。不眠を回避する為の酒というのは、これもある意味で逃避的飲酒の一種でありまして、継続的に就前酒の習慣が続くと、やがて酒量は増えて、気付くとアル中に至っているという事にもなりかねません。


そもそも酒を飲むと眠くなるのは何故なのか?と話ですが、それはアルコールの持つ神経抑制作用(麻酔作用)に起因します。カッコ付で麻酔作用と書きましたが、神経にも色々な種類のものがありまして、それを抑制するという点では、アルコールにも麻酔と同じ特性があるという事を説明する為です。


麻酔薬というのは痛みの伝わりを止める為の薬ですが、痛みの停止にも段階ってのがあって、麻酔を使うと、体性感覚として刺すような鋭い刺激(痛覚)に始まり、温感、冷感、圧感、最終的に触感(物が触れている感覚)の順に麻痺していきます。まーこれは体性感覚の話ではあるのですが、泥酔していると痛いのを感じなくなってたりしますので、そういった面でも麻酔効果が出ていると想像してもらえればと思います。


この他に、アルコールというのは幅広い神経の作用を麻痺させていくわけですが、お酒でよく問題になる物の一つが「下降性抑制系神経」です。

「下降性抑制」というのは、ザックリ云うと脳から身体に向けてセーブをかけている神経の事です。「抑制」という事でマイナスのイメージを持ちがちなんですが、あくまで「興奮」を調整する為の独立した神経系統の事です。


この「下降性抑制系神経」というのは疼痛の伝達にも関与しているという事で鎮痛剤なんかとよくセットで語られるんですが、もちろんアルコールにも先に書いたような鎮痛作用があります。酔っぱらってると怪我したこと覚えてなかったりしますもんね。とはいえ、アルコールは鎮痛剤などのように末端の神経を抑制するのではなく、中枢(脳)にある神経を「抑制」すると言われています。


ん?


脳にある抑制系の抑制・・・?


中枢における抑制系神経の役割とはつまり、衝動的な行動を抑えたり怒りや悲しみなど、強い神経活動を抑えたりする事ですので、飲酒をするとこの制御が外れる事になります。飲酒によってタガが外れる事で、酔っ払いは陽気になったり、泣き上戸になったり、絡み酒になったり、突然腕立て伏せを始めたり、「俺まだ酔ってないよ」アピールを始めたりするわけです。これを抑制から解き放たれた「脱抑制」の状態といいます。


アルコールの場合、「脱抑制」期間は他の麻酔薬と比べても比較的長く、トータルの飲酒量がある時点を超えると「昏睡」に至り、最終的に「呼吸停止」が起きます。アルコールはこの「昏睡」→「呼吸停止」の幅が非常に短いので、うっかり飲み過ぎて急性アルコール中毒で死ぬ人がでるというわけですな。


さて、寝酒に用いられる際の一時的な眠気も、この「脱抑制」の一過性の作用であると言えます。しかしながら、眠った後も神経は「脱抑制」=「興奮」したままなので、当然眠りの質は悪くなります。眠っていると言ってもそれは「うたた寝」であり、脳や身体の疲れを取る為の深い眠りとは異なるからです。飲酒の後は夢をよく見るのもその為ですが、何故かチンチンが朝勃ちしている事も多い。これは多分、利尿作用で膀胱に尿が溜まるからだと思われます。泥酔すると全然勃たなくなるのに、不思議だよなー。


深い眠りにを得られなかった身体は、翌日の疲労もまた蓄積させていきます。そしてまた寝酒を繰り返す事で、どんどん身体は疲労を溜め込んでいく事になります。やはり寝酒は一時的な不眠をごまかす逃避に過ぎないという事ですね。


一方で、酒は良い飲み方をすれば薬にもなります。

ホップを使ったビールは、ドイツでは元々薬でした。「脱抑制」によって嗅覚も鈍麻し、味覚に奥行きが出て、臭いのキツイ発酵食品が美味しく感じれるようになったり、食べれる料理の幅も広がります。消化管の動きも良くなりますので、内臓にも皮下にも脂肪を溜めなくてはならない環境下では、非常に重宝された筈です。


まーそんなわけで、酒は付き合い方次第。


私も最近ではコロナのせいで仕事も不規則になり、雇用調整助成金を貰いながら何とか生きている昨今です。世の中には私と同じように、出勤調整によって急な平日休みや半日出勤が出て、生活リズムがガタガタになってる人も多いかもしれませんが、寝酒は止めときましょう。


酒は楽しんで飲まなきゃダメ。

飲むなら必ず美味しい料理とセットで、翌日休みの日に、ね?

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