第17話 バレンタインデー ~Happy Valentine ~

ポツ……



ポツ……




空から雨が降り出す。




「雨……これじゃ……前と……一緒……」



私は足を止めた。



「……本当……私……バカだ……素直になれない自分が……いる……」




ドンッ

誰が私にぶつかって来た。



「きゃあっ!」



ドサッ

地面に転ぶ私。



「ボーッと突っ立てんじゃねぇぞ!」

「す、すみません……」



私は立ち上がりながら軽く頭を下げ去ろうとした。



グイッ

腕を掴まれた。



「謝って済むなら警察いらないから」

「怪我したらどうすんの?」



肩を抱き寄せる男の人。




「ねえ、俺達と付き合ってよ!」

「えっ?」

「へぇー、あんた良く見ると良い顔してんじゃん?」

「本当」



強制的に連れて行こうとする。




「や、やだっ! 離して下さいっ!」



私は押し飛ばし走り去る。




「おいっ! 追えっ!」



私は3人に追われている事など知るよしもなく






そして ――――




スッと3人は取り囲むように行く道を塞いだ。





「狙った獲物は逃さないって言うっしょー?」


「……つーか……あんた…何処かで……」

「あっ! あーーっ! 」



ビクッ

突然大声を出され驚く私。



「思い出した! 中学ん時の同級生!」

「俺は、違う所でお世話になったし!」

「だったら話しは早いよなぁ~? 行こう、行こう!」

「だよなぁ~俺達と面識あんだし!」



ドンッ

私は再び押し飛ばすも走り去ったあげく、行き止まりになってしまい ――――



その直後、私の携帯に着信が入った。



「…はい…」


「なあ、お前、今何処? さっき迄、お前が視界に届く所にいたんだけど、一瞬にして視界から……」


「……ごめん……劉真……」

「えっ? 何で謝んの? つーか質問に答えろよな」

「ごめん……無理かも……」

「はっ? つーか、雨降ってるし、この前の二の舞……」

「無理だよ……私……今……」




「見~ぃつけた!」

「路地裏連れてきて、最初から、その気だったんだ~?」



―――・―――・



「優梨…? お前………」



―――・―――・



「案外、大胆なんだね~?」



私は首を左右に何度も振る。



「誰と電話?」

「もしかして彼氏?」

「そんなの切っちゃってさぁ~、良い事しようぜ!」






~ 侑木 劉真 side ~



俺は、電話口から聞こえる会話からアイツが、優梨が危険な目に遭ってる事に気付いた。


さっき迄、アイツと距離を置いて後ろにいたが、アイツが俺の視界から一瞬消えてしまったのだ。




「おいっ! 優梨っ! 今、何処……」





プツ……







プーーッ……


プーーッ……


プーーッ……





―――― 携帯が



切れた ――――






優梨が切ったのか?


あるいは相手が取り上げて切ったのか?




後は考えたくないけど……


相手に押えつけられて……?





「くっそっ!」




俺は、とにかく何としてでもアイツを助けたいと思った。


だけど、何の手掛りもない。


路地裏?


行き止まり?



そんな場所はいくつでもある。




―――・―――・



「さあーて、携帯も切ってくれたみたいだし」



3人はジリジリと歩み寄る




「来ないでっ! 私は色気も何もないからっ!」


「あー、良いの、良いの」

「相手してくれれば良いからさぁ~」

「そういう事。関係ないから」




私は劉真の言葉が脳裏に過った。



『女をモノとしか扱わない奴には関係ねーから』




「………………」



「け、警察呼ぶからねっ!」

「呼べるなら呼んでみたら?」

「この状況じゃ無理っしょ?」



1人が駆け寄りグイッと腕を掴む。


ビクッと肩が強張る。




「い、嫌っ! 触んなっ!」




他の2人は私を押えつけるように倒そうとすると、その拍子にチョコレートと携帯が、地面に落ちた。



「あーーーっ!」



私は大声を出した為、3人は怯んだ。



私は、携帯とチョコレートを拾い、その場から逃げ去るように逃げると、すぐに劉真に電話を掛ける。




「劉真っ! お願い出てっ!」



するとワンコールの途中所か、私の携帯から呼び出し音が鳴るか鳴らないかのタイミングで電話に出る劉真。



「近くにある周りの建物を言え!」


「えっ?」


「早くっ!」



私はとにかく劉真に伝えた。



「分かった…すぐ行く…絶対、助けてやるから待ってろっ!」



ドキン


「…劉…真…うん…」





~ 侑木 劉真 side ~



優梨から電話が掛かってきた。


俺は携帯画面に優梨の名前が出てからすぐに出た。


長く話す余裕など無いと思い、アイツが俺の名前を言う前にアイツがいる特定の最低限の目印になる周囲の建物を言ってもらおうと…………


電話を切る直前、アイツが奴等に捕まった事は言うまでもなく、俺は目的地に急いだ。




大事な女性(ひと)いる場所へ


一刻も早く向かった


希沙良 優梨という


愛する女性(ひと)の元へと ――――







―――・―――・





「きゃあっ!」




彼等から背後から捕まれ、口を手で塞がれる。



「静かにしな!」

「ざ~んねんでしたぁ~」

「誰も助けに来ないから」

「悪く思うなよ」




再び路地裏の奥へと連れて行かれる。



引き摺られるように ―――




ドサッ

押し倒される私。




「………………」




≪劉真………お願い……≫




私は抵抗しつつ引き裂かれる洋服と共に恐怖に怯えた。



ドカッ

抵抗し暴れている私の足が、相手の一人の股間に当たったようだ。


うずくまっているのが分かる。

私は逃げるが他の2人に捕まり、二人がかりで押えつけられた。




「嫌っ! 触んなっ! あんた達の相手なんか誰がするかっ!」

「気のつえー女だなっ!」






――― その時だ ――――




カラーン


空き缶の転がる音が響き渡る。




押えられていた体が緩んだ。




「………劉真………?」




私は起き上がる。




「劉真っ!」





逃げようとしたが、再びすぐに捕まった。



「きゃあっ!」


「おいおい! 冗談っしょ~?」

「その手離してもらおうか? 今ならまだ間に合うけど?」

「うるせーなっ! 狙った獲物は逃さねーんだよ!」



「だったら……汚ない真似する薄汚ねー野良犬共に渡す女はいねーんだよっ!」



ドキン

聞き覚えのある言葉に胸が大きく跳ねた。




≪劉真だ……!≫





「お前らが狙った獲物っていうように…俺にとっての獲物はお前らだっつー事…分かってんだよな? 痛い目に遭わきゃ分かんねーんだろ?」



「野郎っ!」




4人はやり合う。





そして ――――





「…テメェ…侑木 劉真じゃねぇか?」


「…これは、これは見覚えあるお顔だ事で。こういう形で会うっつー事は中学ん時から相変わらず悪い事して全然変わってねぇんだな? お前」



そういう会話が聞こえる。

私と中学が一緒だったという事は劉真も知ってる相手だという事は確かだ。




「まだお金せびってんのか? 相当暇人だよなぁ~」



二人はやり合う。


そして結局勝つのは劉真だった。


3人は足早に逃げ去った。



「優梨…?」



私は劉真な胸に飛び込んだ。



「劉真っ!」

「大丈夫か?」

「…こわ…かった………」



劉真は、抱きしめ頭を撫でる。




そして、抱きしめられた体を離し、私は劉真から離れバッグからある物を取り出す。



「……やっぱり……割れてる……」

「えっ? 何?」



歩み寄る劉真。



「優梨? 何処か痛むのか?」


「………………」


「優梨? うわぁ……チョコボロボロ……誰かに渡すはずだったのか? そんなの、また買えば良い……」


「……ぅの…」

「えっ?」

「違うの!! これじゃなきゃ駄目なの!」



私は振り返り、劉真に言うとすぐに手元にあるチョコレートを見つめる。



「えっ!? どうして?」

「今日…街や店探し回って要約辿り着いたチョコレートだったの……」

「優梨?」


「……劉真のイメージに合うチョコレートだって……一目見て気に入って……買ったチョコだったのに…」




スッ

背後から抱きしめる劉真。



ドキン

胸が高鳴る。




「チョコはいらねーよ」

「えっ!?」



私は振り返り向き合う私達。




「もしかして…甘いの嫌い…?」

「いや……好きとか嫌いとかじゃなくて…俺は…お前さえ無事でいてくれれば良いから」




ドキン

胸が高鳴る。



「……お前に何かあったらどうしよう? って…そうしたら電話口から聞こえるお前らの会話」


「………………」


「次の瞬間、電話が切れてお前が傷ついてねーかな? とか色々不安が過んの」


「劉真……」


「前、ドタキャンして、お前一人にさせて……また同じ事させて……二の舞じゃねーかって…だから俺すっげー焦って……」


「………………」


「電話が切れた後、お前からの電話待ったけど、すぐに掛かって来なくて……何度もお前の返事を祈った。要約、掛かって来た時、一瞬安心したけど、まだ解決していないって思ったから目印になる建物言えって……絶対助けてやる! って…」



「…劉真…」




グイッと劉真は抱きしめた。




「…優梨…俺の傍にずっといろ! 俺の隣で笑っていて欲しい! …俺…お前が好きだから……」



ドキン

意外な告白に胸が高鳴る。



「うん…」




私は劉真を抱きしめ返す。



「私も…劉真が…好き……」




顔をあげると同時に劉真はキスをした。




ドキン



「バレンタインのチョコの変わりに、お前の全てもらって良い?」


「えっ!?」



再びキスをすると首スジに唇を這わせた。




「劉…劉真…待っ……」

「好きな女目の前にして、その格好、目のやり場ねーし」


「………………」


「優梨…お詫びに洋服買わしてくんね?」

「えっ? 劉…」

「頼む! 俺も雨で濡れたし」



私達は洋服を買いデートをする事にした。



「家に帰った所で、みんなお前に寄って来るだろうし、だからって速攻ホテルなんて、それはそれで冗談じゃねーし」



「劉真…」



「今日はお前の全てはもらわないから日を改めて全て頂戴」

「考えとく」

「そこは考えとくじゃねーだろ? 相思相愛なのに」



クスクス笑う劉真。



「だって初めてなのに、そんなの怖くて」

「それは俺も同じだけど?」

「えっ!?」

「何だよ」

「いや……」




≪初めて…つーかさっきのキス…ファーストキスだったんだけど…≫

≪つー事は…劉真も?≫




「ねえ」

「何?」

「まさか劉真のファーストキス…」

「えっ…?」



二人して真っ赤になる。



「………………」



「あー、そうだよ!つーか……今日はとにかく楽しもうぜ! せっかく蓮歌が俺達の為に用意してくれたんだし」


「そうだね」



私達は1日を楽しんだ。










































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ベビーシッター ハル @haru4649

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