ウワサ話に御用心!⑨
「二人にお願いがある! 俺のために、新聞を書いて頂けないでしょうか!?」
俺の言葉に、二人は目を見開いた。
昨年、新聞部とは色々あったが、今は友人と言える付き合いだ。きっと二人なら、助けてくれると思った。
すると案の定、長谷川さんは目を輝かせながら
「なんと! あの矢神くんから、新聞を書いてとほしいとお願いされるなんて! でも、この事態を収束させるには、まさに新聞しかありませんね! つまり、私たちの力を借りて、無実を晴らしたいと!」
「そう、その通り! 俺たちは、確かに結婚したけど、その理由は、姫奈が妊娠したからじゃない。ちゃんとお互いの意思で結婚したし、子供だって出来てないし、何より、高校を卒業するまでは、清い交際を続けようとおもってる」
ありのままを話せば、長谷川さんはメモをとりながら
「ふむ、清い交際……ということは、まだ一線はこえていないと?」
「こ、こえてない……だから、妊娠するなんて、有り得ない」
「マジですか! 結婚までした男子高校生が、未だにプラトニックな関係を貫いてるなんて! これは奇跡では!?」
「そこまでいう? でも、これでも姫奈のことは大事にしてるんだ。結婚したとはいえ、まだ学生だし、万が一があれば、不安になるのは姫奈の方だし」
「ほぅほぅ、愛ですね〜。相手を思うからこそ、我慢しているわけですね!」
そう、全くその通りだ!
長谷川さん、よくわかってる!
「でも、高校卒業まで清い交際をつづけるなんて、そんなこと、学校中に公表していいんですか?」
すると、四月一日くんが、冷静に言葉を挟んだ。確かに、こんな決意を公表するなんて、恥ずかしくて仕方ない。でも
「言いたいことはわかる。でも、ここまで大きくなったウワサを静めるには、このくらいの意思を示さないとダメだと思う。それに、モタモタしてると、きっと第二第三の鮫島くんが現れる!!」
もう殴られるの嫌だし、この事態を鎮めるためだ!もう、なりふりかまってはいられない!
「だから、頼む。新聞部の力で、俺と姫奈の誤解を解いてほしい。お願いします!」
そう言って、真摯に頭を下げると、二人は「もちろん!」っと言って、快く受け入れてくれた。
きっとこれで、またいつもの日常が戻って来る。
新聞部の二人の気持ちに感動しながら、俺は、そう強く確信したのだった。
◇
◇
◇
──そして、次の日。
新聞部が書いた新聞は、先生からの許可もおり、無事、学校中に貼りだされた。
生徒たちは皆、誤解だったと分かり、ほっとしたり、ざわついたり、笑い飛ばしたり。
だが、新聞部が、皇成の無実を晴らそうと書いた記事は、少しずつ人々の心をおちつかせ、大騒動に発展する前に終息した。
だが、その記事を見て、一人だけ不満を抱えている人物がいた。
「姫奈〜」
掲示板に貼られた新聞を読む姫奈の傍に、友人の女子生徒たちが駆け寄ってきた。
彼女たちは、昨日、体育の時に、姫奈の体を気遣っていた友人たち。だが、新聞部の記事を読んだからか、姫奈が妊娠していないとわかり、みんな、ほっとしたようだった。
「もう、姫奈ってばー、妊娠していないならいってよー。私ら、めちゃくちゃ心配したんだから!」
「そんなこと言われても、私、そんな噂があるって、知らなかったし」
「しっかし、矢神やつ、なかなかやるじゃん! 高校卒業まで、手を出さないなんて!」
「ホント! 姫奈、めっちゃ愛されてるじゃん!」
「それに、最近変わったよね、矢神くん。前はあんなに地味で華がなかったのにさー、最近は、なんかこう、カッコよくなってきたっていうか」
「あ、わかるー。鍛えてるのか身体引き締まってきたよね。あんなに変わるんだったら、姫奈と付き合う前に、目つけとけばよかったー」
「もぅ、やめてよ。皇成くんは、私の旦那様なんだから」
少し不安げな表情で姫奈が見つめれば、友人たちは、ニマニマ笑って、姫奈に抱きついた。
「もう、姫奈ってば、ヤキモチ? 可愛い〜」
「大丈夫だって! 友達の旦那、寝取ったりなんてしないから!」
すると、友人たちは、また笑いながら立ち去って行って、姫奈は、小さく息をつく。
「……結婚すれば、こんな心配しなくてすむと思ってたのに」
皇成は、姫奈と付き合ってから、どんどん魅力的になっていった。
身体も引き締まってきたし、そのせいか、男の余裕みたいなのも出てきて、女子の間でも、最近カッコイイと言われるようになった。
(私は、ずっと底辺のままでもよかったのに……)
それが、自分ためなのは、よくわかっているが、できるなら、皇成の良さを知るのは、自分だけでありたかった。
「……それに、こんなことまで、みんなに公言しちゃうなんて」
そして、改めて新聞を見つめ、姫奈は、不機嫌そうに眉をひそめた。
──高校卒業までは、清い交際を続ける。
そんな皇成の決意表明が、この事態を収束させるためだということは、よく分かっていた。
だが、姫奈は……高校卒業まで、待つ気はなく。
「……もう、仕方ないなー」
呆れたように呟くと、姫奈は、クスリと笑みを浮かべた。
──ねぇ、皇成くん。
私は、あなたを、誰にも奪われたくないの。
だから、早く皇成くんを
私だけのものにしてしまいたい。
身も心も、全て──
「だから……今夜は、私の方から襲っちゃうね♡」
そう言って、妖艶に微笑んだ姫奈は、まさに学園一の高嶺の花!
そして、その日の夜、皇成には更なる試練が襲いかかるのだが、そのおかげか、夢すら見れないほど、ぐっすり眠れたそうです。
↑ おしまい ↓
********************
【あとがき】
皆様、最後まで、閲覧頂き、誠にありがとうございました。
最後だし、学生組はオールスター出したいと思ったら、思ったより長い番外編になってしまいました。でも、楽しくラブコメできて、個人的には満足です。
あと、この後は、完全にR18な世界になりそうなので、皆様のご想像にお任せしたいと思います(笑)
そして、これにて、矢印さまの言うことにゃ!全て完結となりました。
ここまで書き切れたのも、皆様の温かい応援のおかげです。本当に本当に、ありがとうございました。
人生は選択の連続で、時には、間違った選択をし、後悔することもあるかもしれませんが、その選択の先には、また別の幸せが待っているかも?
ですので、どうか後悔をおそれず、心のままに生きてください。皆様の人生が、悔いのないものとなりますことを、お祈りしております。
それでは、最後となりますが、番外編までお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
よかったら、このままスクロールして、★をつけてくだされば、作者としては、もう思い残すことがありません。
あと、またどこかで、お会い出来る日がくるといいな?そんな期待をもちつつ、最後のご挨拶とさせて頂きます。
それでは、皆様、ここまで応援頂き、誠にありがとうございました。
全ての読者様に、感謝の気持ちをこめて。
ありがとうございました!
雪桜
矢印さまの言うことにゃ! 雪桜 @yukizakuraxxx
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