たった二人。間に流れるのは、確かな信頼。
- ★★★ Excellent!!!
秋めき、紅葉美しい山にて。男の前には、従者の広い背があった。
そしてその先には、赤い斑の……
彦人皇子という、天皇の御子。そして彼の舎人であった赤檮という青年。
二人の男が紡ぐ、ただ一瞬の物語。
懐かしささえ漂うその文章には、彦人の憂いと優しさが溢れる。
蘇我や物部が争った時代、彼は何を見詰めていたのだろうか。
定めとは、何がきっかけで揺れ動くかわからない。だからこそ、舎人を思う皇子の命令は、悲しささえも帯びる。
確かにそこにいた、歴史を紡ぐ者たちの息吹がここにある。