たった二人。間に流れるのは、確かな信頼。

秋めき、紅葉美しい山にて。男の前には、従者の広い背があった。
そしてその先には、赤い斑の……

彦人皇子という、天皇の御子。そして彼の舎人であった赤檮という青年。
二人の男が紡ぐ、ただ一瞬の物語。

懐かしささえ漂うその文章には、彦人の憂いと優しさが溢れる。

蘇我や物部が争った時代、彼は何を見詰めていたのだろうか。

定めとは、何がきっかけで揺れ動くかわからない。だからこそ、舎人を思う皇子の命令は、悲しささえも帯びる。

確かにそこにいた、歴史を紡ぐ者たちの息吹がここにある。

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