インク瓶に金魚は泳ぐ

不思議な世界観のお話です。
神様がひょいひょいと生きているそんな世界は楽しそうですね。

人外頭のキャラクターはイラストの場合が多く、あまり文章化はされにくいイメージがあります。
そのぶん、描写にはインパクトとわかりやすさが重要だと思うのですが、こちらの作品では見事に表現されていました。

夏に物書きをしながら読んでみたいです。
インクを使って書けば文字が泳ぎだすかもしれませんね。

　頭部の形状が空っぽのインク瓶である『私』が、電車でちょっと居眠りした隙に、その頭に生きた金魚を入れられて困り果てるお話。
　ファンタジーです。現代日本を舞台にしたローファンタジーで、異能や異形がもりもり登場するのですが、でもアクション的な派手さはないタイプの物語。
　特筆すべきはやはり設定面の豪華さ、「付喪神（異形頭）」「幻想師」などの設定の独特さです。ファンタジーならではの、そしてアクの強い不思議を用意した上で、でも描かれているのはあくまで日常の小さな事件。これだけの存在を配置しながら、でも戦いや惨劇のようなものがどこにもない、その平和さがとても魅力的でした。
　厳密には平和であることそ…続きを読む