第10話 ついにスマホを終わらせた


しばらくして父が捜査員を帰らせると、俺と百合さんの側まで来てコタツに座った。少しためらったのち父は話し出した。


「宗次、百合さん。君らは聞く権利があるだろう」

大きなため息をつく。


「……金主きんしゅって知っているか? 詐欺のスポンサーの事だ。今のオレオレ詐欺は高度化しその分金がかかるようになった。人手や賃貸料・什器だが、もっとも連中にとって重要なのはネタ、名簿だよ。質のいいネタには金がかかる。質の悪い名簿では利益が上がらないんだ」


父の話はまるで中小企業の経営のようだ。


「そこで金主が登場する。金を出し詐欺で得た利益を得る。片方では質が高くまだ未使用の名簿=一番名簿を奪い合う。いい名簿は1件数十万円するらしい。このカルタは連中にとってお宝だ。これはこういう事件だ」


――だが父の話だけでは執拗な犯人の行動を説明できない。父はもう黙ってしまった。そこで俺の方から真相を提示した。


「つまりこのリストには金主本人も載っているんだね。いつかこれが世の中にでると自分が危ない。そう考えてオレオレ詐欺にかこつけてかすめ取ろうとしたのか」


父は一瞬だけ目を開いたがすぐに瞼を閉じた。

「もうそれ以上はよせ」

命令というより懇願だった。


――しかし、どうやっておばあちゃんを探し当てたんだろう? そうか金主はおばあちゃんとおじいちゃんをよく知っている人物だ。そいつは名簿の一部を持っている。名簿の全部が欲しいんだ。


しばらくして父も帰った。百合さんと俺はコタツに座わる。

「私なんだか疲れちゃった」

テーブルに伏せた彼女の髪の黒のグラデーション。


「結局、あなたを倒せ……じゃない、頼れって――おばあちゃんの考えは正しかったのね」

上目づかいで俺を見る百合さん。


いつの間にか後ろにおばあちゃんが立っていた。

「好きになったら押し倒せ」

「もう、おばあちゃんたらぁ」


俺は母に返信したスマホを置いた。


その後、名簿や金主がどうなったか知らない。だが父が何も言わないところをみると、少なくともJKと車椅子の二人は大丈夫だろう。

俺の方は彼女持ちのカースト最上位にランクアップした。……自己評価だが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

JKと車椅子。それに誰でもなれるスマホ探偵 新開 直 @shinkai-nao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ