第2話 妙法寺駅→須磨水族園

 さて、新神戸ゆきの地下鉄で1駅2分、妙法寺駅に着いた。乗ろうとしていた5系統のバスには乗り遅れた。5系統は、1時間に4本程度運行されているのだが、4本のうち3本は若草町発着のため、駅から数百メートル離れた停留所にしか止まらない。つまり、駅からすぐに乗れる便は、1時間に1本しかないというわけだ。もちろん、ほかの便が止まるバス停まで歩いてもいいが、ここは潔く、5系統をあきらめてルート変更。75系統の須磨一の谷ゆきに乗ってみることにした。

 妙法寺駅を出た75系統のバスは、すぐ南へ下る。それなりに遠かったが、終点のひとつ手前「須磨駅前」で降りた。途中は寝落ちしていたからか、記憶がほとんどない。

 ちなみに初詣の時期には、須磨のこのあたりには、沿線の多井畑厄神への初詣客が詰めかけ、臨時便が大量に運行されているが、方向幕を装備したバスは須磨に来ないので、わざわざ写真を撮りに行く気が起きない。


 ところで「須磨駅」とひとくちに言っても、山陽電鉄の駅とJR山陽本線の駅のふたつがある。山陽電鉄の山陽須磨駅は最速達の直通特急をはじめ、阪神線からの特急やS特急も停まる駅だが、駅舎はかなりこぢんまりとしている。一方のJR須磨駅は、快速と普通が停まる駅で、駅舎は山陽のそれより大きい。数年前までは、JR須磨駅にMV30というめずらしい券売機があったので頻繫に訪れていたが、券売機が更新されてからはめっきり用事がなくなった。ここから快速列車に乗れば2駅、10分ほどで神戸駅まで行くことができる。大阪へも35分程度で行けるので、住むにはちょうどよい距離なのかもしれない。


 75系統の終点「須磨一の谷」は、須磨駅(JR・山陽)と須磨浦公園駅(山陽)の中間の、なんともいえない微妙な場所にあり、ここで折り返すバス運転士の詰所がある。(また71系統・72系統・81系統も、75系統と同様、須磨一の谷で折り返す。)厳密にいうと、詰所の建物は「須磨一ノ谷プラザ」といい、貸会議室がメインの役割なのだそうだ。1960年代前半に建てられ、かつては勤労会館海の家という建物だった。現在は、須磨一の谷でバスを降りても観光をする場所はないし、さらに電車に乗り換えるには、ひとつ手前の「須磨駅前」を利用すれば事足りる。まさに「須磨一の谷」は、バスが折り返すだけの場所であることがわかる。そういうわけで今回は、一の谷の手前、「須磨駅前」でバスを降りたのだ。


 須磨駅前でバスを降りたあと、私は少し東へ歩くことにした。海風がちょうど心地よく吹いてくるのに、そこをエアコンの風でよく冷えたバスで通るだけでは面白くないからである。

 須磨駅から10分~15分ほど東へ歩いたところには、「シーパル須磨」という、いかにも70年代・80年代の雰囲気が漂う国民宿舎(じつは神戸市立)や、神戸市立須磨海浜水族園があり、かなり小規模ながら神戸のリゾート地としてにぎわう。ヤシの木も植えられており、すこしばかり南国気分を味わえる。いや、リゾート地と呼ぶには規模があまりに小さいかも。(なお、神戸市は須磨海岸を再整備する計画を進行中で、須磨海浜水族園の民営化をはじめ、リゾート化が進められるとかなんとか・・・)

 たとえば白浜町(和歌山県)の白良浜(しららはま)周辺は、リゾートホテルや企業の保養所が多数立ち並ぶような、文字どおり「リゾート地」だが、なんといっても京阪神から遠い。高速バスやJRの特急列車こそあるものの、交通費だけでも高くつき、日帰りするには疲れる距離だ。しかしこの須磨であれば、大阪から35分ほどでふらっと来ることができ、さらに近い距離に海水浴場と水族館がある。なんともおトクな場所ではないか?

 

 須磨水族園の西側にもう一か所、市バスの回転地がある。「衣掛詰所」という詰所で、4台のバスが休んでいた。意外にも出入りは頻繫なようで、私も少し待ってみたが、市バスで一台しかいない車種の「松708」は動かなかった。

 さて須磨水族園まで歩いたところで、須磨のリゾート的な雰囲気はおわり。おとなしく81系統の新長田駅方面ゆきのバスに乗る。

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令和の神戸市バス紀行 ふるさと @KobeLineF

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