信仰は心の奥にあるもの

夜空に光る星で星座を作るとき、その星座は意図的で、無理のある組み合わせもあるけれど、一度そう見ることにすればそれで決まる。理由もなく、そう決まる。
しかしその星座の中に、無視できないほど強く輝く新しい星が現れてしまったら?

主人公はどれだけの苦悩をもってこの手紙を書いたのか。祖母が嫌がるであろう話をあえて書いて送る時の気持ち、しかしこの話は祖母にこそするべきものであり、その唯一語るべき相手の祖母にも、時間はあまり残されていない。
他の方のレビューでも、「主人公の信仰とはまさに手紙の最後を締める一言ではないか」というご指摘がありましたが、私も全くそう思います。私なりに付け加えて言えば、主人公の最後の一言は、ただの本心に思えない。祖母に聞かなければいけない話だけれど、もうすぐ死を迎える祖母にそんな話をわざわざするのか、いやそれでもこの疑念はこのままにしておけない、いやしかし…。そういった逡巡の後に持ち出した一つの願い。そして、一種の免罪符のようにつけた最後の言葉。それは祖母が主人公を愛していたという、その一点においては祖母の行為が赦される、そしてこの私も……。そんな淡い期待が見え隠れしたような手紙の締めくくり。これほど苦しんでも、彼女は「手放すことができない」。
信仰の両面の姿を見せられました。素晴らしい作品です。

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