【R15】婚前交渉【なずみのホラー便 第84弾】

なずみ智子

婚前交渉

 ほぼ同時期に結婚が決まったアヤとチサコは、長年の親友同士だ。

 プレ花嫁ならではのキラキラと輝く幸せオーラに包まれたチサコとは対照的に、アヤの表情は時折、どんよりと曇る。

 理由を聞いたチサコに、アヤは少し声を落として答えた。


「どうしても彼とセックスが合わないの……別に下手なワケじゃなくて”する場所”が問題。だって、階段でセックスしたがるのよ……それも勾配が急なら急なだけ火が付いちゃうみたいで……私はベッドでしかセックスしたくないのに。そもそも階段はセックスする場所じゃないし。階段で激しく突き上げられ、揺さぶられるなんて、怪我どころか……睦み合いつつも絡まり合って転げ落ちていく命の危険と常に隣り合わせよ。それなのに『深夜のX神社の石段で一度してしてみないか?』とか『家を建てる時は、まず階段にこだわろうな』とか言ってくるんだもの」


 親友・チサコにだからこそ、アヤは話すことができた。



 しかし、数日後、アヤの元に悲報が届いた。

 ”チサコとアヤの婚約者”が、X神社の石段下――急な勾配のうえ段数も多い石段下――にて遺体で発見されたと。

 そして彼女たちの遺体の下半身は、ともに剥き出しであったとも。



――fin――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【R15】婚前交渉【なずみのホラー便 第84弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ