その運命に巻き込まれたのは誰だったのか。

 幼い頃に両親を亡くし、姉の嫁ぎ先に引き取られた多与子。
 彼女の静かな語り口調で物語は進みます。

 穏やかで優しい義兄、奔放な姉、何くれとなく世話を焼いてくれる女中。
 それなりに穏やかに幸せに暮らしていた彼女の生活は、少しずつ何かが綻ぶように変わっていきます。

 やがて姉と義兄の間に起こったひとつの出来事から、彼女を取り巻く世界は突然、決定的に取り返しのつかない状態に——。

 静かで、けれども今にも何かが起きそうな張り詰めた雰囲気に息を詰めて一気に読み進めた後、一人称で語られているその意味に気づいた瞬間、背筋がぞくっと冷える恐ろしくも美しいラストでした。

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