漠然と戦前かと思われる頃の日本が舞台です。勝ち気な姉と控えめな妹。一見、対照的に見える二人が面差しばかりでなく心の奥底に似通った闇を抱えていると分かる展開に引き込まれます。語り手の妹はもちろん、姉、義兄、年取った女中、姉の情夫など一人一人のキャラクターに奥行きを持たせた描写も魅力的です。
言葉遣い、描かれる情景、心理描写、そのどれをとっても素晴らしいとしか言いようのない作品です。私もこの作品のような、レトロ溢れる作品を書きたいと望んでいるので、嫉妬の心が浮かぶ、かと思いきや同志がいたという喜びと、いいものが読めたという満足感で一杯です。