アメリカンレモネード
村井さんが飲み物を持ってきたタイミングで彼が手を離した。手を繋いでいる間、彼
は私の手を親指で擦っていたがそれ自体に嫌悪感は抱かなかった。ふとおじいちゃんに昔手を擦られた記憶が蘇り、亮介も肌を擦る行為が好きだな、と思いだした。どの年代の男も女の肌を擦りたいのだろうか。
レモンスライスがグラスに挿してあり、上が濃い赤で下が透明のその飲み物はとてもきれいだった。彼は女の子の扱いに慣れているのが分かる。合コンの時は引き立て役っぽく演じていたが、実際モテるのは彼なのかもしれないと思った。そして今私の反応を期待しているはずだ。私は彼が求める役を演じる。
「わーー。めっちゃキレイ。飲んじゃうん勿体ないくらい。」
大袈裟に手で顔周りを覆い、とびっきりの笑顔を彼に向けた。
「やろー。そんなに喜んでくれたら嬉しいわ。」
彼は私の頬をツンと一度触った。彼に触られることに嫌悪感が全くない。すっと距離感を縮める術を彼は心得ている。
「マドラーで混ぜてね。」
村井さんはフレンドリーに笑顔で私に言った。マドラーでゆっくりかき混ぜると赤ワインとレモネードが混ざり、薄くなった。混ざり合ってしまえば特別感もなくなり、特にきれいでも何でもない赤ワインのレモネード割りの出来上がりだ。一度混ざってしまえば元には戻らない。飲んでみると意外とレモンが効いていて、爽やかで飲みやすく女子受けしそうな味がした。一夏の恋にアメリカンレモネード。すごくよく合っているな、と一人ニヤけてしまった。
「明日香ちゃんもう酔ったん?」
飲み物を飲んで一人ニヤニヤしている女がおかしく映ったのだろう、彼は訊ねた。
「めっちゃ飲みやすい。美味しい。体は熱いから酔ったんかな。」
そう言って私は液体を半分くらい飲んだ。
「良い飲みっぷりやね。」
そう言って彼もビールを流し込んだ。
「明日香ちゃん優しい人が好きって言ってたやん。具体的にはどんな人が好きなん?」
合コンでの話を覚えていたのだろう、私は彼が何を言っていたか忘れてしまっていた。
「松井さんみたいな人好きです。」
敬語を混ぜて、相手が欲しい言葉を投げる。直球だったが気持ちがこもっていない分言いやすく照れもなかった。これを亮介に言うとなると難しい。付き合っている相手には伝えづらいことが、さっき会ったばかりの男にはこんなにすんなり言えるのだろう。
「そんなん会ったばっかで分かる?」
駆け引きなのだろうか、面倒くさいな、と思ったが少し押しすぎたようだ。男は狩猟本能があるから女から押しすぎると引いてしまうらしい。
「んー。直感やけど、まだ分からんかもね。」
私はアメリカンレモネードを飲み、彼に微笑んだ。
ギブアンドテイク 蚊取り線香 @katorisenko97
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- 毒島伊豆守毒島伊豆守(ぶすじまいずのかみ)です。 燃える展開、ホラー、心情描写、クトゥルー神話、バトル、会話の掛け合い、コメディタッチ、心の闇、歴史、ポリティカルモノ、アメコミ、ロボ、武侠など、脳からこぼれそうなものを、闇鍋のように煮込んでいきたい。
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