黒い夜と白い光

蒼狗

黒い夜と白い光

 幽霊にでもあったのかと思った。

 雨に当たらぬよう傘を深くし歩いていると、真っ黒のコンクリートの地面に白い足が現れたのだ。

 白い足だ。靴を履いているわけでもない。ましてやサンダルでもない。裸足だった。

 思わず傘を上げ、その姿を確認する。雨で弱々しくなった街灯に照らされるように、その人は立っていた。

 女性だ。思わず見惚れてしまうほどの美しい女性がそこにいた。

 雨で濡れ、街灯に照らされた白い肌は光っているようにさえ見え、背中まである黒い髪は背後の闇の如く深い黒色だった。瞳も、顔立ちも、そこに立つだけで一枚の絵画であるかのように、すべてが美しかった。

 妖しくも目を奪われる光景に、雨で体が濡れてしまっていることさえ気が付かないほどに釘付けになっていた。

 ふと、女性と視線が合い、その白く輝く手が差し出された。

 私はまるで誘蛾灯に引き寄せられる虫の如く彼女に近づき、躊躇うこともせずにその手を握ったのだ。

 後に残されたのは、持ち主を失った傘が地面に落ちる音と、それを穿つかのように降り止まぬ雨だけだった。

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黒い夜と白い光 蒼狗 @terminarxxxx

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