ミヤが黒く閉じた。

 全くの視界が利かぬ中で、蘭の君が戦士イクスに問うた。

 どのような新世界を望むか。

 戦士イクスはこう答えた


「俺は、世界が決めた目的のままに走り、何も知らないまま守られてここまで来た。その事に後悔はないが、俺自身の目的は俺自身でみつけたい。そして、誰かを守れる新世界でありたい」


 蘭の君は、自らの望みをこう伝えた。


「私はもう、待つのに飽きました。運命があるなら、私の方から出向いて行きます。そういう新世界が良いです。だから聞かせてください、あなたがどんな道を辿ってここまで来たのかを。私たちが一つになる間に」



 真っ暗なミヤに地鳴りが響く。旅立ちが始まる。蘭の君の妹たちが祝福する声が届く。


 おめでとう。さようなら。元気で。行ってらっしゃい。


 そしてミヤは昇っていく。

 戦士が尖兵たちと戦いを繰り広げた大地へ向けて、この世界を泳いでいく。


 蘭の君と戦士イクスは闇の中で溶け合い、新たな世界の種となる。種を抱えたミヤは卵となり、長い時を経た後に産の道を抜け、どちらの世界とも別の、新世界として産まれる。



 産まれた世界は、女児であった。

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世界の種 帆多 丁 @T_Jota

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