同級生が超能力に目覚めても、ボンクラ男子の日常は変わらない。

 ある日、授業中に火炎放射能力に目覚めた男子高校生の沢村。彼の力を狙い、他の能力者たちや秘密組織が動き始める……のだが、本作の主人公はこの沢村ではなく、彼のクラスメイトの後藤である。

 この後藤が友人とともに沢村の今後の扱いについて話したり、沢村の戦いを野次馬しにいったりするのだが、そこで交わされる会話のボンクラっぷりが実に心地良い。クラスメイトが超能力に目覚めたのに、校庭に野良犬がやってきたぐらいの温度感で話が進むし、沢村の超能力、通称『沢村キネシス』について考察を始めても、すぐに話題が脱線してどこまでいってもシリアスにならない。でもこのどうでもよさそうな会話の流れが非常に男子高校生らしくて楽しいのだ。

 また一応話題の中心になる沢村が結構平凡な性格なのに対して、中二病要素が非常に強い他校の能力者や、暴力の行使に一切ためらいのない手芸部員など、脇を固める女子が非常にインパクトの強い設定と性格をしており沢村よりも遥かに印象に残る。

 結構大きな事件も起きているのだけど、そうは感じさせない軽妙な語り口と他愛ないけれど愉快な会話、そして変なキャラたちの魅力でグイグイ読ませる独自の魅力を持った力強いコメディだ。


(「覚醒する力……! 超能力特集!」4選/文=柿崎憲)

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