水玉模様のワンピース

ジュン

第1話

同僚はきいた。

「で、彼の告白の言葉はなんだったのよ?」

「うん……」

「恥ずかしがらずに教えなさいよ!」

「『上野の美術館に行きませんか』って、彼言うの」

「で、オッケーしたの?」

「うん……私も絵は好きだし」

「で、美術館行ってきたんだ」

「そう。彼きくの。どの作品が一番印象に残ってるって」

「で、なんて答えたの?」

「『シェリー』ていう絵があったんだけど、それって答えたの」

「それ、どんな絵?」

「女性の絵、裸婦の絵」

「へえ」

「彼が、じゃあその絵のポストカード買って帰ろう、っていうの」

「記念に」

「そう。私が、あなたは、どの絵が印象に残ってるのってきいたら……」

「なんて答えたの?」

「水玉模様のワンピースを着た女性の絵」

「へえ」

「そんな絵あったかしらって私思ったの」

「ひょっとしてあんたのこと言ってたんじゃないの」

「ううん。私、水玉模様のワンピース着てなかったの」

「そう……」

「わたしね、彼にきいたの。水玉模様のワンピースを着た女性の絵なんてあったかしらって」

「で……」

「たぶん無かったと思うよ、って彼言うの」

「デタラメだったの?」

「彼が続けて言ったの」

「…………」

「水玉模様のワンピースを着た女性の絵が存在し得る可能性を僕に与えてくれないか、って」

「…………」

「画家がもし君を発見したら、君の美しさのゆえ放ってはおかないだろう。だけれどヌードなんて僕は認めない。きっとその時、君はこう尋ねるはずさ。『最愛の人が贈ってくれた水玉模様のワンピースを着た姿でいいですか』と」

「はあ……」

「そう言って、彼、私に水玉模様のワンピースをくれたの」


終わり


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水玉模様のワンピース ジュン @mizukubo

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