モルジャの物語

白沢悠

大好きな物語

 むかしむかし、この町には魔女が住んでいました。

 魔女は不思議な薬で人々の怪我や病気を治していました。


 海には恐ろしい怪物がいて、通りかかる船を沈めていました。

 魔女は人々のために怪物を退治しようとしていました。

 けれど怪物はとても強く、魔女だけでは倒すことができません。


 ある日、魔女は浜辺で倒れている若者を見つけました。

 若者は遠い国の王子様で、海に落ちて流されてきたのでした。

 魔女は王子様を助け、家に連れて帰りました。


 やがてふたりは恋に落ち、一緒に海の怪物を退治しました。

 怪物は心から反省し、海の守り神になりました。

 そうしてみんな、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。


 ――本当は、魔女は今もひとりで町外れの岬に住んでいます。

 でも、魔女は子供が嫌いです。

 だから、子供は決して岬に近づいてはいけません。

 町の外の人は魔女を怖がってしまいます。

 だから、外の人に魔女のことを話してもいけません。

 心優しい魔女と異国の王子、後に守り神となる海の怪物のお話。

 それは、ロイトとライメが大好きだった物語です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る