2.

彼氏はその日だけで3人の女性とデートを重ね、3人全員をホテルに連れ込み、走って出てきては次の待ち合わせの場所に入っていった。彼氏の名前は「サトシ」以外にも「ノボル」「ショウ」「ケンイチ」と名前を変え服装を変えていた。


「まるでカメレオン。」

「カメレオンのほうがまだ可愛いわ!あれじゃ擬態して餌をとるチョウチンアンコウみたい。」

「確かに。」

季依はその日のうちに依頼に来た女性とアポを取り、近くのファミレスに呼び寄せた。

そしてもう一つどこかに電話をかけると。華弥子を連れて店に入りドリンクバーを頼んだ。

数分後、女性は店員に案内され席に着くなり季依に詰め寄った。

「あの、どうしてよりによってここなんです?」

「とおっしゃいますと?」

「ここ、浮気相手の働いている店なんです。気まずいったらないじゃありませんか!」

女性は水を一口飲んでから溜息を吐いた。

「それは、奇遇ですね。」

「あの女は今日いないんでしょうね?」

「いますよ?今椅子を挟んでそちら側に。」

季依が指をさすと、女性は席を立ち向こうの席を覗きこんだ。

向こうの席では、浮気相手がびくっと肩を震わせた。


「よろしければ相席にしましょう。席が遠いと私も声張らないといけないので辛いんですよ。」

季依が席を指さすと、依頼の女性と浮気相手の女性が肩を並べて座った。

「一体どういうつもりですか?私はもうこの女の顔も見たくないんですけど?」

「それは浮気相手とされたこの方も同じでは?」

依頼の女性は季依の一言に口をつぐんだ。


「それではこの度の調査内容を報告いたしますが、まず最初に……お二人は本命ではないようです。」

「はぁ……?」

「……どういうことですか?」

女性たちは意味が分からないと言いたげに首をかしげた。


「あなた方の彼氏、サトル様及びイオリ様に関しましては、あなた方以外にも今日だけで3人は体の関係のある女性が判明いたしました。」

「な……そんな……。」

「嘘でしょ……。」

女性たちはショックが大きいせいか、状況を受け入れられそうもなかった。

依頼女性のほうは、おもむろに店員を呼びとても強い度数のアルコール飲料を注文する始末。

浮気相手の女性はぼろぼろ泣き出すばかりで、季依は次の言葉を出しあぐねていた。

しかし、先ほどまで黙っていた華弥子がバンッと机をたたいた。

「きーは嘘はつかない。キーに謝って。」

「かや……。」

その表情は普段人に見せていたぼんやりした表情ではなく、季依と2人きりの時と儀式の時にしか見せていないはずの大人びたものだった。

「もう一度聞くわ。あなたたちはどうしたい?」

すると、浮気相手の女性が先に口を開いた。

「あの男……あの男さえいなければいい。」

「そうよ……あいつを……あの男を。」

「「もう二度と私たちの前に現れないようにして。」」

彼女たちの声で、ファミレス店内はしんと静まり返った。

その切実な思いは、季依と華弥子を沸き立たせるには十分だった。


「承りました。」

「えぇ、……理由、受け取ったわ。」

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