3.
「……はい?」
華弥子が画面を指さす。
「あなたは……人を勝手に撮るのが好きなんでしょ?」
「好きというか……仕事なだけよ。」
「仕事……?」
首を傾げる華弥子。
「パパラッチ?」
「……違う。」
「じゃぁ、カメラマン?」
「それも違うわ。」
「ん〜?」
華弥子はうんうん唸ってチラッと季依に目配せをした。
「……探偵よ。」
華弥子はぱぁっと満面の笑みを浮かべて、頬の横でかわいらしく手を合わせ。
「探偵さん!!すごい!!ドラマみたい。」
「そんなすごいものじゃないから。……お客さんも少ないし。」
「でも素敵よ!」
「……そりゃどーも。」
「だからお友達になりましょ!」
「なんでそうやって話の脈絡がないのよ!第一、私に友達なんていらない。」
季依は声を荒げた。
華弥子は季依の手の中のデジカメを指さして一言。
「だってその録画、勿体ないんだもの。」
「……はぁ?」
「私、儀式をあんなに上手に撮って貰えたの初めて!嬉しかったのよ、とっても。」
「……だから何?」
「これからも人の命は解放されるわ、私の力で。」
華弥子のその発言は確信的で、季依の心が微かに好奇心に沸き立った。
「」
「その録画はあなたの力になれる、そうでしょう?」
「えぇ。」
「私はまだ続けるの。足りないから。」
「……つまり何?私は殺されないってこと?」
季依が訝し気に問いかけると、華弥子はほほをぷぅっと膨らませた。
「私はお友達を殺さないわ!!!!」
「……それで私のお金にもなるって?」
大きく頷く華弥子に、季依はため息をついた。
「……それなら約束して。あなたは私を邪魔しないって。私も決してあなたの邪魔をしないわ。これが"お友達"の条件。」
「いいよぉ〜。」
季依は華弥子を連れて、コンビニによって温かい紅茶とお茶菓子を見繕った。
ここで華弥子の琴線に触れることは避けておきたかった。
華弥子は季依の足跡を追うように、嬉しそうについてきた。
季依自身の探偵事務所に連れて帰ると華弥子は中をきょろきょろと見渡してフフッと笑い声を漏らした。
「これ温かいお茶。あなたの分。」
「わぁ、ありがとう。温かいわ。」
「……良かったわね。」
華弥子の反応に、季依はやっと一つ息をついて自らのティカップを傾げた。
そして、季依はさっそく核心を突く質問を投げた。
「ねぇ……どうして人を殺したの?」
「ううん、違うの。」
「違う?」
「間引きしてるの。」
「え?」
「人の魂ってきれいなの。海の中の宝石みたいに。」
華弥子は何かを思い出すように空をぼんやり眺めた。
「……はぁ。」
季依が目を細めると、華弥子は言葉をつづけながら両手を水を掬う器のように湾曲させて顔を曇らせた。
「でもね、あの人は汚いの。器が汚いと折角きれいな宝石も汚れちゃうでしょ?そんなの可哀想だから。」
「……。」
「だから器から魂を解放してあげてるの。」
華弥子はまるで大人にほめてもらう子供のように目を輝かせた。
「そう……。」
「あなたは?」
「へ?」
「どうしてわたしのことを撮ったの?探偵さんだから?」
「……そう、探偵だから。あなたに興味があるの。」
「キョーミ?」
「そうよ。」
「そっか……うふふ、そっかぁ……。」
華弥子の質問は的から少し外れていたが、季依は本心を押し殺しそれらしい理由を並べた。
季依の返事に納得したのか、華弥子はまたにっこり微笑んだ。
本当によく表情が変わる人形だ……と季依は眉をひそめた。
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