死んで、笑って、写真を撮って

今まで生きてきた上で自分の感じたことの無い感情や、したことの無い経験などを文を通して感じられること。それも小説の醍醐味の一つだと私は感じます。何もすることの無い休日でさえも、一度小説を開けば「世界が色づくような恋をしたり」「殺人現場に立ち会ったり」「戦後の気持ちを味わったり」と様々な体験ができる貴重な一日に変わります。
さてこの小説ではタイトルの通り人が死にます。目の前で人が死んでいる。普通に生きていたらあまりないことでしょう。しかし不思議なのは周りの人が「死んだ人を見て笑っている」ということです。死人を見て笑い、写真を撮り、周りで踊る。他の本を読んで「人が死ぬのは悲しくて切ないもの」という印象があった私にとっては、その光景はとても奇妙に映りました。
しかしこの舞台が日本では無く、アマゾンに住む孤立部族などに置き換えられるとしたら。その村の長老などが死んだとするならば、きっと火を焚いて、踊って、華やかに弔うのではないだろうか。調べると今もメキシコでは「死者の日」といってお墓をマリーゴールドでカラフルに埋めて、故人に思いを馳せるの祝日があるのだとか。そう考えると人が死んで笑っているのも、不思議なことではないような気がしてきました。
貴重な体験をありがとうございました。

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