遺品
大理石のような美しい男の手が真白の手を恭しく持ち上げ、薬指にキラキラ輝く指輪を嵌めた。この意味がわからないのは、ませてない子供か徹底された特定宗教育ちの人間くらいだろう。次いで自分よりも随分サイズの大きい指輪を渡され、己の指にはめてほしいと指示された。人生で、ここまで途方に暮れた事はない。というか、この惑星にも地球とよく似た文化があったのか。
「貴女は私と、私は貴女と出会うために生まれた」
輪っかを彩る(地球人から見ればだが)宝石を見る。ルビーやサファイヤ、エメラルドにパール程度の区別しかつかないが、指輪に嵌められた宝石はきらきらと美しく輝いていた。宝石を特別好むわけではないが、素直に素敵だと思った。
「何という石なんですか?」
「貴女の家族だよ」
異星婚(1/24更新) 狂言巡 @k-meguri
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