その重みを理解していない人間が

死を描く時は手軽に殺して、死を読む時は手軽に感動する。
演劇部の脚本を見て、「死が美しいしウケる」と言ったアオイに、「美しくてたまるか」と言い放ったツカサ。

私も、感涙物と謳われる死ネタは好きでは無いです。
死は、作者の技量が足りなくても想像力が足りなくても、美しく見えます。
でも簡単に美しく見せようとすればするほど、当事者たちは苦しむ羽目になる。

死ぬという行為は徐々に出力が落ちてエネルギーが尽きるのではなく、尽きるために激しく燃える行為なんだろうなと思います。
人が死にゆくのは、本人も周りも、途方もないエネルギーを消耗する。

アオイは、県大会の前に演劇部を去りました。
結果成績はボロボロ、アオイは周囲に恨まれることになります。
でも、アオイにはどうでもよくなっていた。周りが大学受験で頑張っていても、進路が決まっていたアオイは頑張れないまま。
そこに、後輩がやって来て……。

最後のオチは、「駆け足」と思う方もいるかもしれません。そんなに簡単に救われてよいものなのかと。
けれど私は、彼女が辛い問題を先送りし、何もしない日を過ごしたからこそ、その一言が届いたのではないかと思います。

問題を先送りするってことは、まだ、明日があると信じられる証拠なのですから。

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