死せる囚われの筋肉男

デッドコピーたこはち

第1話 委員長

「覚悟はいい? 相野くん」

 委員長黒縁メガネのレンズを輝かせて言った。草一本生えていない荒野に吹きすさぶ砂まじりの風が、委員長のおさげを揺らした!

「覚悟なんて全然できてないぜ!」

 俺は三年B組、出席番号1番、相野清純あいのせいじゅん15歳!修学旅行のバス移動中、白い光に包まれたと思った次の瞬間、俺は異世界に飛ばされていた!

 『神さま』を名乗る、頭の中に響く声によると、俺たち三年B組は全員異世界の神々の暇つぶしの為に異世界へ飛ばされ、最後の一人になるまで戦わされるらしい。流行のバトロワを参考にしたそうだ。まったく迷惑な話だぜ!

「相田くん、私はね、前から君のことが気に入らなかった……授業中に騒いでクラスの輪を乱すあなたが!」

 委員長はさらにメガネを輝かせる!来る!俺たち三年B組一人一人に与えられた固有技能パーソナルスキルが!もうやるしかない!

千理銃センリガン!」

 俺は指鉄砲を委員長に向けて撃った!俺の技能スキル千理銃センリガン!指鉄砲を撃つ仕草をした対象のステータスを強制開示する!ソロのバトロワで情報収集系の技能一本とかもうやってられないんだぜ!

 委員長の本名は法田律子のりたりつこ技能スキル死せる囚われの筋肉男チェーンデスマッチョ!鎖に囚われた筋肉質の男の死体を自由に使役する!

死せる囚われの筋肉男チェーンデスマッチョ!」

 委員長は両手を天にかざし、叫んだ!

 だがなにも起きなかった。

「えっ?」

 委員長は呆然としていた。

 彼女もよく理解していなかったのかもしれない。死せる囚われの筋肉男チェーンデスマッチョは筋肉男を召喚する技能ではない。あくまで使役する技能だ。鎖に囚われた筋肉質の男の死体は別途用意しなければならないのだ。とんだハズレ技能である。

 しばらく微動だにしていなかった委員長だが、やっと状況を飲み込めてきたらしい。委員長の顔が絶望に染まっていく。

 なにもない荒野に委員長のすすり泣く音が響いた。俺はそれを遠巻きに見つめることしかできなかった。強い風が俺たちを身体の芯まで冷やして行った。


 その後、勝手な異世界の神々への復讐を誓って組んだ委員長と俺が、神域に突撃して神々をボコボコにするのはまた別のお話。

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死せる囚われの筋肉男 デッドコピーたこはち @mizutako8

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