雨のち曇り

ジント

転機

〇県〇市〇町…ある田舎町、午後2:45分、ある家の門の前、雨が降る中左手で傘を差し、着慣れない背広を着ていた。


俺はかなり緊張していた、今からこの家に訪問してあることをしなければいけないからだ。


これからすることは、とてもいけないことだと判っている、本当はしてはいけないことだとも判っている。


だがコロナのせいで大学にも行けず、アルバイトも行けず、家賃や、大学の学費、生活費等、お金が必要なのだ。


大学の先輩に、[これからすることが成功すれば大金が入る]とメッセで誘われた。


この先輩は1年前俺が彼女ともめた際に大変お世話になった方だ、結局彼女と別れてしまったが、この先輩のおかげで大学で変な噂が流れることがなく今に至っている。


何故彼女ともめ、変な噂が流れそうになったかは内緒にさせてもらう。


俺にとってもトラウマなのだから。


その先輩の話を聞いた際とても嫌だったが、断り切れずにここにいる。


全く,うっとおしい雨だ、まるで俺の心のようだ、不安、心配、罪悪感、良心の呵責、いろんな感情が入り乱れている。



その家の門には[原田]と表札が掲げられていた。


俺は意を決して門を潜る。


目に入ってきた家は平屋で屋根はセメント瓦、瓦の色は青…少し色が剥げている、門正面に家の玄関があり、右側には玄関から約2m離れたところ高さ1.5mに片引き窓。


窓にはお玉?のシルエットが…台所だろうか?


さらに2mで家の端、そこから洗濯竿の先が少し見える、その先はブロック壁だ。


玄関から左側約1.5m先には人が出れる大きさの引き違い窓、カーテンが引かれているため中が見えない。


だが音が漏れている、耳を澄ますと人の声と笑い声?…テレビの音か?。


となるとここは居間かな?


さらに左1.5mで家の端、すぐにブロック壁があった。


俺はゆっくりと玄関に近ずき玄関の横にあるインターホンのボタンに右手の人差し指を当て、ゆっくり押した。


【ピンポーン】と音が鳴り左隣から。


「は~い」と声がした。


やはり左の部屋は居間だったか。


俺は声がしたのでインターホンはら1歩下がっり玄関前中央に移動、家主が出てくるのを待った。


玄関が【ガラガラガラ】と音を鳴らしながら俺から見て左側の扉が開いていった。


そこから見た感じ50歳…いや60歳か?1人の女の人が出てきた。


俺の印象では、女の人はとても優しそうな顔をした人だった。


(俺はこれからこの人を・・・)と思いつつ。


「どちら様でしょうか?」と少し困惑した顔をしながら俺に声を掛けてきた。


「先ほど先輩からお電話したと思いますが、私は木村と言います。」俺は先輩に言われたセリフを言った、もちろんこの名前は偽名だ。


「もしかしてあなたが?…少し待っててくださいね」と言い居間に戻った。


居間から【ピポパポ】と音が聞こえた、この音は電話の掛ける音?


しばらくすると話し声が聞こえだした。


「鈴木さんですか?」原田さんの声がした、この名前は先輩の偽名だ。


《・・・》さすがに先輩の声は聞こえないか。


「今、木村さんと言う方がお見えになりましたが・・・」


《・・・・・・・・》


「はい、その方に封筒を渡せばいいんですね?」


《・・・・・・・・》


「はい、解りました」と言い【ガチャ】と音がした。


すぐに原田さんが居間から出てきた。


出てきた原田さんの右手に封筒が持たれていた。


「これで息子は警察のご厄介にならずに済むんですね?」と俺に問いかけながら封筒を差し出した。


「はい、これで先輩は今まで道理に過ごせますよ。」と先輩に言われたセリフを言い封筒を受け取った。


そのとき!居間から3人の男が飛び出し「動くな!!」と声を張り上げた。


俺はビックリし、門の方を見るとすでに2人の男の人が傘を差しながら立っていた。


居間から出てきた3人の真ん中の人がポケットから手帳を出し、片手で上下に開けながら「〇〇警察署の佐々木です」と言い、警察記章を見せ手帳を閉じポケットにつまえた。


「あ…」と俺が言いながら(これから逮捕されるのか。)と頭の中でよぎった。


その時、左腕の力が抜け、体の正面に降りる、体の正面あたりで指の力も抜け、そこで傘の持ち手が滑り、【カタ】と音を鳴らしながら地面に落ちた。


それに続き俺の左腕も完全に下がった。


まだ雨が降っている、少しずつ俺を濡らしながら。


「君、特殊詐欺の受け子だね?」、といい手錠をポケットから出した。


俺は「…はい」と答えた。


「両手を出して、15:01分、特殊詐欺の現行犯で逮捕する。」と言い俺だ出した両手の左手首から手錠を【カチャ】と音を立てながら掛け、右手首にも掛けた。


俺はうな垂れ、玄関前から警察官に連行される。


門の前には覆面パトカーだろうか、車が止まった。


左右にいた警官の右側の人が車の後部座席を開け入るように促す。


その時「今日、1人息子の4回忌だよ!!」と大声が後ろから聞こえた。


声は原田さんの家、玄関先から聞こえたので、うな垂れた頭を上げながらそちらに向くと、原田さんか泣きながら大声を出していた。


「こんな日に息子を語って詐欺をしようなんて!あんた等は鬼か!悪魔か!この人でなし!!」と言いながら真っ赤な顔をし、鬼のような形相ぎょうそうをして怒鳴りその場で泣き崩れた。


(俺たちは何ってことを!)と反省しつつ、体を原田さんに体を向け、腰を大きく曲げ頭を下げた。


「大変申し訳ありませんでした。」と言い10秒ほど頭間を下げた後、体を起こし車の後部座席の中央に座り、両サイドに警察官が座った。


運転手の警官が車を操作しだすと、ゆっくりと車が動きだした。


走り出して何分後かに俺は大きく息を吸い、吐き出した、≪スゥ~…ハァ~~≫。


気持ちの整理をするためだ。


詐欺をせずに済んだ!との喜びと、原田さんに対しての申し訳なさ、これから取り調べに対する不安、量刑に対する心配。


いろんな感情が入り乱れが、さっきほどよりかは心は少し軽い。


フッと車窓を見ると、いつの間にか雨がやんでいた。


まだ黒い雲で覆われていた空だが、俺は思わず(全くこの今日の天気は、俺の心をとことん表してるな。)と思ってしまった。


俺はそのまま車窓から見える空を眺めている。


-----車は走る、俺と俺の運命を乗せ、これから俺の罪を取り調べるために-----



------------------------------------------------------------------------------------------------


この話は空想上のものであり、登場している人物もリアルとは関係ないものです。


又、犯罪を助長するために書いたものでもありません。


1度の犯罪があなたの人生を大きく変え、そして変わった人生はどんなことをしても戻ってくることはありません。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨のち曇り ジント @zinnto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ