僕はあなたのものだから/SUPERNOVA
【本編情報】
『僕はあなたのものだから』
――これがおれの余計なところで――
https://kakuyomu.jp/works/16817139556765554008
第五回こむら川朗読小説大賞参加作品。
ホラー
5,966文字
* * *
『SUPERNOVA』
――ラジオって、奇跡みたいだ。
https://kakuyomu.jp/works/16817139557034043285
第五回こむら川朗読小説大賞参加作品。
SF
5,959文字
* * * * * *
新規書き下ろし、お題『男性の一人称小説』、3000~6000字、完結済、というレギュレーションで2022年7月7日~2022年8月20日に開催された自主企画『第五回こむら川朗読小説大賞』のために書いた作品二本です。
(自主企画ページ: https://kakuyomu.jp/user_events/16817139556453736660 )
今回のテーマは男性の一人称小説縛りでした。
思い起こせばかつて『本山らのPresents 第八回本山川小説大賞』では女性一人称縛りがありましたね。
(その時の投稿作はこちら
『さそり座の夜、あの屋上で』 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886522769
『GHOST & SIMPLEX』 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886558821)
あのときは川系参加初めてだったし、とにかく小説の形のものを、女性一人称だから女性主人公で、はわわわ……となりながらクソ暑い中(あれも夏でした)めちゃくちゃ加熱するスマホを握りしめて書いてたのでした(ほとんど全部スマホで書く族だよ!)。
あれから複数の川に流され、時には死んだりもしましたが、私は元気です。
今回は『男性の』一人称小説。喋りを書かねばならぬと思いました。女性一人称の時には女性主人公っていうところまでしか決めなかったのに、なんでこうなったのだろう? と考えるとやっぱ川タイトルですね。タイトルに『朗読』が入っているところが。
単に男性が主人公なのと、男性一人喋りなのとは、使われる言葉がやや変わってくる印象です。朗読ってことは、その喋りの方にしたほうがいいんだね、と思って書き始めました。別に普通に書いたっていいと思うんですが、私の書くものは通常、一文が結構長くてあんまり朗読向きではない印象があったので。
とはいえ先に書いた『僕はあなたのものだから』は、一人喋りではないし(二人です)、キリヤパートも
いつも通りプロットもくそもない真っ白状態で
ともあれ、何らかの除霊ものを書きました。霊ものの便利さは、ある人には見えてある人には見えないとか、自分はみんなから見えてるつもりだけど実はそうではない、みたいな認識ギャップに環境光の布を掛けておいて後からオープンできるところです。変化球の『信頼できない語り手』といいますか。
今回は、キリヤが気付いてない、
ウリ専ボーイのお話になったのは多分、直前まで二次創作の方に長期滞在していてBLを浴びまくっていたせいかもしれません。書いてた頃の検索履歴がなかなかひどかった。相場とかお店システムとか、描写しないにせよ一応知る必要があったので色々ググり、体験談レポブログとかお店サイトとか随分見ました。最近の男の子はキレイね……。
あと、また今回もヤバい親を出してしまい、あーーーーーと思ったのですがどうしてもあの新聞記事部分が書きたくて、私はついこうなりますね……。
その生育環境から主体性のなさを選択せざるを得なかった、目の前の相手に従うことで過ごしてきた子。多分いっぱいいると思うんですけど。で、生来の素質と生育環境から学も苦手で、分からないことだらけで、っていう子。ケーキを何等分とかのレベルじゃねえの、まずホールケーキを漫画とCMでしか見たことないし見たことないからホールケーキと認識してねぇの、みたいなやついっぱいあるんだろうなと思ってATM時間外手数料の件を書きましたが、正直私もしばらく怪しかったですよ時間外手数料。今はネットバンク使うようになって月何度かは手数料自体掛からないから、更にポンコツになってしまった……。
総じて『僕はあなたのものだから』は、ともあれ今回のこむら川でも
例によって書き終わるまでラスト決まってなかったんで、最後まで書いた瞬間に「あっ、『下人の行方は誰も知らない』パティーンじゃん」と思ってしまいましたが、この終わり方キレがよくて使いやすいです。
さて。
一本提出して人権を得たあと、課題が積まれてたのでいちど二次書きに戻りました。今回ざっくりいうと二次→川①→二次→川②という流れで、毎日ひたすら睡眠時間を削り労働を呪いながら書き続けており、この間の二次は二か月で十万字くらいになりました。ばかだね。ばーかばーか。錯覚かもしれないけど書くのちょっと速くなった気がする。ばかだけど。
じゃあ二本目書きましょうね! となって、思ったのが、せっかく『朗読』と銘打たれた川なのだから、もっとそっちに寄せていきたい、ということでした。
どうしたらいい? 何ができる? 朗読に合う短編とは?
別に喋りに寄せてない作品でも良い朗読がたくさんあるのはプロの朗読CDとかを聞いても明らかなことです。私はラジオをまあまあよく聴く子どもでしたので、普段ニュースを読んだりトーク番組したりするラジオアナウンサーや役者さんなどが時に文芸作品の朗読を行うのを耳にしていました。それは音だけの立派な演劇の一種で、上手い人は本当に上手くて、こいつパーソナリティとしてはムカつく八割だけど元々役者でやってただけに朗読はしみじみうめえなあ、と思う人とか普通にいました。人間性を棚に上げてもよいと思えるほど、聴きよい朗読芸というのはあるものです。例えば日高晤郎とかなんですが、私あの人のラジオ番組全然好きじゃなかったけど時々やる朗読はまじで好きだった。耳がぴたりと吸い寄せられるようだった。死にやがって。お前のいない土曜を生きることになるとは思ってなかったよバカ。
あとテレビドラマでもナレーションすっげぇ良いときあるよね。洋画を地上波で観たら吹き替えバリクソうめぇみたいなこともあるよね。『TAXI NY』フジテレビ版で主役の声当てた森公美子まじで天才だった。
みたいな感じで私はテキスト偏重の生き物ですけど人が発する声の言葉も大好きなんです。だからこそ洋画は字幕で観て、英語ポンコツのくせに少しでも役者の声を聴きたいと思ったりします。
で、喋る芸と言って思い出されるのが落語じゃないですか。だから最初は二本目で落語をやりたいなと思っていたんです。できなかったね。落語っぽい
今回『芝浜』をリメイクした参加作品がありましたね。芝浜のサゲは一応わかる。いいオチだなと思います。芝浜いいよね。バカみたいな話なのに沁みる。そういう感じに読み終われそうな噺を今からオリジナルで作るのは難しいな、と今回は断念しました。
『死に神』方面で行ったらそれはもう一人喋りのホラーってことになるし、一本目でホラー味はやっちゃったので、二本目は別ジャンルのほうがいいな、とも思いました。
それで、書き始めはしたものの。
三千字くらいで「まだ何の筋もない」、四千字くらいで「何もわかってない」、五千字で「ジャンルだけは分かってきた」、みたいな呻き声がツイッターに残っています。ばかなのかな。いつもこうなので私は私に慣れました。(真似はしないでください。引いた図面通りに書けるほうが遥かに安心確実です。)
何が起こってたかというと。
さきほど書いたように落語は諦めました。また、それより前に書いたように、私はラジオを割と聴く子どもで、たとえば『放送室』や『深夜の馬鹿力』で育ちました。『放送室』はダウンタウン松本くんとお友達の番組ですが関西芸人の中高年以上というのはどうも割と落語を知っています(因みに今現在は松本くんのこと全然好きじゃなくなっちゃってるし『放送室』自体も聴き直したら自分基準でアウトになるやつあるんだろうなと思います。聴いてた当時の私には凄く面白かったです)。また馬鹿力のパーソナリティ伊集院光さんはラジオおばけの元落語家です。
そういうことです。
ラジオ。
ラジオをやろう。
そういうことなのです。
だから、話の筋とかジャンルとかの前に「ラジオを喋り始める」がありました。
マジで何も決めずに書き始めたんだぞ!
とはいえ本物のプロのラジオだとちょっと取り回しがやりにくい。たとえば番組中に何か不測の事態が起こった場合に、たぶん緊急の対応フローが決まりすぎてると思いました。調べるのめんどくさくて……(怠惰)。
じゃ素人にしよっか。素人のラジオってなによ。ポッドキャスト(懐)かよ。今? むしろ配信? 音だけを、今? えっ何? Clubhouse? スペース? 知らんわ。
いまいまの状況から考えると、『ラジオ』って非常に限定されたデータ配信方法なのですよね。音だけ。マジで音だけ。電波送るだけ。今は音声だけでも動画フォーマットであげるから画像つけるよアーカイブも残るよとかそういう感じになってるけど、もし昔のラジオっぽくやるならそれはどんなシチュエーションか。
そこで『ラジオ録る課題でした』というソリューションになりました。音だけ録れと。
素人が宅録するなら話の途中でなんか起こっても小説的に対応がきくんじゃねえかという、ノープラン書きが板についたバカの発想です。何しろ、宅録なら移動しながら話したっていいし、途中で予定外に切ったっていいんだ。
あとはほぼ即興と自分の切り出しです。いつもの通りです。
ド頭から自由に喋ってもらった結果、講師のハルちゃんは勝手に生えてきました。あと、水たまりにセキレイがぴこぴこしてた駐車場は私の行ってた大学の駐車場だし(舗装しないもんで雪解けの頃まじで地獄と化した)、銀塩写真撮るのか好きでイオンモールの写真屋でバイトしてたのも私だし、そこの店長が作ったPOPがラブホ色だったのも実話です。みんなで止めました。店長は特に嫌なやつではありませんでした。いい加減すぎて心配な大人でしたが。
そのへんまでは、まだSFじゃなかったんよ。
多分、多分なんですが、セキレイをセキレイとだけ書くのがどうかなと思って名前を調べようとしたんですけど、そのときにいや別に創作セキレイでもよくね? って急に思って、えーっ宇宙にセキレイいたらどうするぅ? ってなって、いやもうこの段階で何でなんだよ。どうするって何。わからん。何もわからん。で、なんかいい感じの名前つけたろと思って「宇宙 古語」とかググって「
セキレイのせいでSFになりました。
この段階でもう地球ではねえな、という感じになっててまあコロニーてきな? ものなんでしょう? で『宇宙の』セキレイと名付けられるようなものは恐らく地上にはいない別種で環境適応してるはずでしょう。
じゃあなんか生態でっち上げよう。
宇宙の、と名付けられるのならそれっぽい行動するんじゃありませんの? てか地上のセキレイは虫とか食べるけど宇宙ではなんなの? 面白いから光合成みたいなことしなよ……星の光は豊富でしょ? という安直な発想で
それから光食ったら光りそうという原始的な発想で
でもイワシ玉みたいにワッと方向変えるときの美しさみたいなのは明らかに鳥の群れのこと想像してて、たぶんムクドリみたいな超大群のことを思い出してた気がします。あれが光ったら綺麗だろうなと思って。
で、これSFなんですね、そっかそっか、と思いながらも話は文化遺産衛星
前に書いた『カラヴィンカの祝福』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054890193945)では
まず飛天っつー名前がズルいんよね……、
まあそれで快晴の青に仏塔の装飾、そこをやわらかく巡る飛天の群れ、というやつを脳内で視ちゃったからそうだったことにしました。実質祖母んちに飾ってあった飛天の絵じゃん。オッケーサンキュー幼少時代。
この絵を決めてから
正直、この飛天のエピソード必要だったかどうかは分かんない。まあ必要か。現実味を飛ばしていくには役立ったかも。
このあとラジオ聴きに行くというのも急に決めたやつでした。これもだいたい私がやってたことです。カーステのラジオってなかなか性能が良くて、夜間はかなり遠くのAMも明瞭聴取できたので、コンビニ弁当買ってド田舎のちょっと高いとこに車停めて、もそもそ喰いながらラジオ聴く、という根暗な趣味を時々やっていました。カーステラジオの他にも、短波ラジオを持ってって色々聴いたり。短波ラジオではたいがい、結局AM枠の621kHzで
そのへんのことが漏れ出した結果、主人公が宇宙世紀の
ところでコロニーにいて近くの地球の地上局のAMは多分聴けない気がします。距離もさることながら電離層で内向き(地上向き)反射しちゃうと思うんで。主人公が聴いてる周波数帯を明らかに書かなかったのはそのためです。軌道局を設定し五局同期とかして宇宙空間で聴けるような放送をするにしろ、どの周波数帯を使うかは私の知識セットではちょっとどうにもなりませんでしたので、なんかそういう感じに聴けるやつがあんだよ。フワッとしろフワッと。
後に
このあたりで
主人公が
はい。お話の骨子は終わりです。
あとはたのしいデコレーション〜〜〜〜。
とはいえ書きながら都度バンバン決めちゃってたんですけど、
あと
全体に、もし朗読するとしても何となく意味分かりそうな感じのルビを心がけました。全部は分かんないけど何となく……、って感じ。
それとラスト。
いつもラストが決まらなくて筆(指)が止まるんですよね……。
やや停滞したあとこのラストを書いて、タイトルも一緒に決まった感じです。
最後に三回くらい本気の音読速度で黙読して、課題録音の長さは十五分に決めました。疲れた。喋るって疲れるよ!
というわけで、できた〜!
二本出したい、それもなるべく早めに提出したいと思っていたんです。よかったよ……。
さて、書き終わってから思ったんですけど、『SUPERNOVA』は根本的には『ほしのうた』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054888837421)と同じようなことを書いていますね。
私こういうの好きなんだろうな。
今回も楽しかったです!
記憶の投げ込み:あとがき的なものたち 鍋島小骨 @alphecca_
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