第8話 コンクール本選

いよいよタケルくんの演奏。

一曲目はベートーヴェンの田園か。


音楽室から聴こえていたけど、クラシックに無知な私には作曲家はおろか曲名など知る由もなかった。

そうか、あの運命で有名なベートーヴェンの曲だったのか。


落ち着いた美しいメロディー、そしてどこかに冒険にでも行くような壮大さ。

線の細い彼らしくない、大きな演奏で男らしささえ感じた。


2曲目はショパンのエチュード。

エオリアンハープ…どんな意味なんだろう、あとでスマホで検索しよう。


なんだか蝶々がヒラヒラと舞っているような、そんなイメージを持った。


ああ、もっとクラシックの曲を知りたいな。タケルくんのファンとして、無知なままじゃダメよね。


その級の演奏が終わり、ホワイエに行くと、タケルくんとさっきの女性、そして男性が一緒にいた。

「イケメン!」

「でもちょっとおじさんじゃない?」

「年上のイケメンよ」

「ね、あの女性の彼氏かダンナさんじゃないの?」

「そうかも、なんか雰囲気もお似合いだもの」


私たちはヒソヒソと話をしながら、タケルくんにバレないようにホールを後にする。

結果が気になったけど、ホームページで発表されることを予選で学んだ。

あまり長居をしてタケルくんにバレたくないし、早々にホールを出ることにしていたのだ。


私たちは駅前のファストフード店でハンバーガーとポテトを食べながら、結果がホームページに発表されるのを待った。

「タケルくん、ピアノ弾く時ってあんなスーツ着るんだね」

「似合ってたね」

「演奏もすごくカッコよかった~!」

「舞台での演奏が聴けるなんて、感動だよ~~!」


今日あったことを話しているうちに3時間も経過していた。

「ね、結果まだかな」

リロードすると、パッとこれまでと違う画面が表示される。


「出てる!!」

「え!」

「タケルくん、入賞してて!!」


「え~っと、奨励賞だ!」

「それって凄いの?」

「分からないけど、名前が載るって凄いよね!」

「全国大会は?アキラくん?あ、タケルくんの後に弾いた人だ」

「そっか~!あの演奏もすごかったもんね、それに超かっこよかった!」

「ピアノ王子って感じだったよね!!」


それから小一時間さらに話は盛り上がって、私たち「タケルくんを応援する会」は結束を強くした。


私は、タケルくんのピアノが好きで無理して同じ高校に進学。

タケルくんのピアノを通して仲間ができて、クラシック音楽についても少し勉強してみようかな、と思い始めている。

彼自身はカケラも気づいていないだろうけど、私に大きな影響を与えてくれた人…。

そして、これから私みたいな人が増えていくのでは?と漠然とした予感を持っている。


タケルくんのピアノはどうなっていくんだろう…


きっとどんな風に進んでも、私はタケルくんのピアノを応援し続ける。

私みたいな素人に向けてでも、人を魅了する力が彼の演奏にはあるから…


ただの「ファン」として応援する立場も悪くはない。


あるJKの憧憬 完


最後までお読みいただきありがとうございました!

おまけ的娯楽小説でしたが、女子の目から見た世界が描きたくて、名前すらない主人公を軸に本編1部と2部と描きました。

明日からは、本編第3部に入ります。

ようやく…!ようやく動き始める主人公タケルを応援していただければ幸いです。

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「ピアノ男子の憂鬱」外伝集 はる@ピアノ男子の憂鬱連載中 @haru-piano

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