運命と思惑が巧みに交錯する海洋ロマンス

美しくも猛々しい海。それを体現するかのような船乗りの男。
定められた宿命を背負って、公国に生まれてきた金の髪の娘。

がんじがらめであった運命と思惑の糸を切り開いて、自分たちの辿る道を見つけ出す大人の純愛物語です。

蕩けるような甘い時間にいやらしさはなく、しっとりと描かれています。
また僅かな時間も惜しむように登場するそのシーンの多さが、二人の深い愛情を表しているようでもあります。

少女から大人へと移りゆく、それだけでなく過酷な運命を背負う娘が抱える不安と希望、その全てを包み込むように、それでいて決して余裕があるわけではなく、常に立ち向かう姿勢の男。さらにそれを取り巻く人々や人ならざる存在。そして美しく雄大な海。

美しい筆致で描かれる情景と物語に浸ってみては如何でしょうか。

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