気が付くと、既に日は落ちていた。そして、片田舎特有の、中途半端な星空だ。それでも、見えるものは見える。

「あ、天の川だ」

「ホント?」

「ああ。今日は月もあまり出てないし。きれいに見えてるよ」

「そうだね」

「こっちは、カシオペヤ座かな」

「そうだね」

「ここから、もうちょっと先に見えるのが、北極星であってる?」

「あってると思うよ」

「北斗七星は……山に隠れて見えないか」

「そうだね」

「……ねえ、遥香」

「なに?茜ちゃん」

「今、星空見てるんだけど」

「そうだね」

「……見えてる?」

「見えてない」

「……え?」

「知らなかったの?あたしが、夜に全く周りが見えなくなるの。夜盲症っていうんだけど

「」

「やもーしょーだよ、やもーしょー」

「……知らなかった、です」

「だからね、山だって見えないよ。もちろん、星も」

「……ごめん」

「ううん。謝らなくていいよ」

「いやだって、こんなの、楽しくないでしょ?」

「いやいや。あたしは、茜ちゃんと一緒にいれば、楽しーよ?」

「でも、このままだと、帰るときに……」

「茜ちゃんが手をつないでくれれば、大丈夫だよ。ね?」

「……本当に?」

「本当だよ!」

「……そっか」

「ところで、茜ちゃん」

「……なに?」

「ファミレスでは、あんまり食べ過ぎちゃだめだからね?」

「……やだ」

「え~。いじわる~」

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星空を見た。ところで…… 深谷田 壮 @NOT_FUKAYADA

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