「でさ、そのとき、マナちゃんが、なんて言ったと思う?」

「あ、ごめん。よく聞いてなかった」

 私が遥香の話を聞き流してしまっても、お構いなしに口は動き続ける。

「気にしなーい、気にしない!」

「……ごめん」

「え〜そこ謝るの〜」

「じゃあ、遥香も、気にしなーい、気にしない」

「え~」

「何か不満でも?」

「あたしのコメント、パクらないでよ~」

「わかったわかった。それで、門限は大丈夫?」

「あ、そうだった!」

 そんな大事なのを忘れてたのか。ちょっとびっくり。

「茜ちゃん、ケータイ貸して!」

「それは通信制限関係ないでしょ」

「……そう?」

「そう」

「じゃあ、ちょっと失礼」



 彼女の門限は特殊で、『日没までに帰ること』らしい。真偽は定かではないけど。とはいえ、右隣で、親と会話しているだろうし、きっと、正しい。



「オッケーだって!」

「よかったね」

「って言っても、もーすぐ日没でしょ?このままここにいる?」

「いる」

「オッケー」

「あ、あと、もうしばらくここにいるけど」

「ヘーキヘーキ。外で食事するって言ったし」

「……親に?」

「そうだよー」

「私、そんなに金持ってないんだけど」

「あたしが出すよ」

「ならよかった。それじゃあ、帰りは焼肉ね」

「え~。ファミレスでいいでしょ?」

「……仕方がないから、ラーメンで許す」

「太ってもいいの?」

「私はいいよ」

「え~そんなわけないよね~」

「そんなわけある」

「……じゃあ、せめて、蕎麦屋にしない?」

「冗談だよ。ファミレスでいいよ」

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