行き止まりに着いたときには、繋いだ右手が蒸れていた。冬だというのに。

「目的地は、ここでいいの?」

「もちろん!で、ここはどこ?」

「マップだと……」

「はやくはやく~」

「……自分で調べたら」

「やだー」

「なんで」

「だってギガ使うし〜」

「こっちも使うんだよ」

「あたしはすでによーりょーせーげんですー」

「ならもっと早く言って」

「うぇーい」

「お?今度はパリピか?」

「いぇあ!いぇあ!」

「フゥ!フゥ!」

「あ!」

「あ?」

「茜ちゃん、はやく教えてよ~」

「はいはい」

「ここどこ?ここどこ?」

「もうちょっと待って……ここだ」スマホを見せる。

「……ケッコー歩いたね」

「今から帰ると、日が暮れるけど、どうする?」

「だったら、もうちょっと、ここにいる」

「了解」



 了解してくれた。のははいいけれど、これから、何をして暇をつぶせばいいんだか……

「そういえば、今日の授業で~……」

「今日は寝てたんじゃなかったの」

「いやいや!全部じゃないよ」

 どうやら、話すネタには困らなさそうだ。今日も。



 思えば、遥香との会話は、常にとめどないものだった。そんな記憶がある。いや、遥香が、永遠に話を続けられる人なんだ。

 都庁に登ったときも、町の祭りのときも、林間学園も。遥香との思い出といえば、大体がおしゃべりだけだ。ビル群の景色だったり、りんご飴の味だったり、圧倒的な星空すら、頭になかなか入らない。いや、入れさせてくれないのだ。

 彼女のマシンガントークは、それ程に強烈なのだ。

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