幻想と現実の狭間に棲む生物、その出産記録

 作中のドラゴンは人々の幻想、認知、あるいは信仰によってその存在強度を高める幻獣でありながら、同時に単なる動物――多少パーツの多いトカゲでもある。

 ドラゴンの珍しさ/デザイン的な不可思議さが「シマウマ」や「キリン」と並べて比較される描写は、ほんの数行で、その実在感を「カバ」と同程度にまで引き上げる。無駄なく、鋭く、凄まじい技術だ。
 そうしてドラゴンが身近になったからこそ、ドラゴンを取り巻く人々の感情をも身近に感じられる。

 7000字強で現実世界を再編してのける、良質な幻想文学。

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