世界でたった2頭しかいないドラゴンの出産。人間の出産とは違うドラゴンの出産がリアルに描かれています。幻想的なドラゴンなのに、リアリティーあるのがすごいです。メッセージ性もありました。
『出産』に至るまでの感覚の打破、敢えて一般的な動物と並列に扱い、同じ目線で『飼育』『観察』する人々のドキュメンタリー、人間が常々行っている『都合のよい解釈』、生命と向き合う上での倫理観。様々なエッセンスをきれいなマーブルに整えて焼き上げた、バタークッキーのような作品でした。サクサク読めて、とても美味しい。あえて『幻想の存在』を扱うからこその巧みな構成は圧巻です。
トカゲとかヘビとか結構好きだからかもしれませんが、ドラゴンが可愛いです。仲良く砂遊びする姿を妄想しつつ、切なくなったりいとおしくなったり、時にハラハラしたり…とりあえず、トカゲとか好きだなって方にはぜひおすすめです。
テーマ設定が上手いと思いました。面白いです。しっかり内容が練ってあり、読んでいて情景も浮かんできましたし、心の中で頑張れって応援してしまいました。素敵です!(๑˃̵ᴗ˂̵)
作中のドラゴンは人々の幻想、認知、あるいは信仰によってその存在強度を高める幻獣でありながら、同時に単なる動物――多少パーツの多いトカゲでもある。 ドラゴンの珍しさ/デザイン的な不可思議さが「シマウマ」や「キリン」と並べて比較される描写は、ほんの数行で、その実在感を「カバ」と同程度にまで引き上げる。無駄なく、鋭く、凄まじい技術だ。 そうしてドラゴンが身近になったからこそ、ドラゴンを取り巻く人々の感情をも身近に感じられる。 7000字強で現実世界を再編してのける、良質な幻想文学。