妖が住まう阿の国の物語。
三人の姫の恋が描かれるという本作の、まだ一人目の姫のお話しか読んでおりませんが、もう主人公の藤花さまの生き様が見事過ぎて、書かずにはいられませんでした。
作者様の別作品の親世代のお話だということですが、私はそのお話を読んでおりません。
何も知らない真っ新な状態で読み始め、この世界に引き込まれました。
一つ鬼と二つ鬼。
人の世界も妖の世界も、欲や栄枯盛衰は同じ。
世の流れに翻弄されながらも、強い意志で己の恋を貫く藤花姫から目が離せませんでした。
こんな凄い物語を紡げる作者様の力量を、ぜひ本作で感じてみてください。
私は他の姫様のお話を読む前に、ひとまず藤花姫の生き様に今しばらく浸ります(*^^*)
あやかしの国である「阿の国」。
その北の領を統べる鬼の一族の激動の時代と、渦中にいた三人の鬼姫たちの生き様を描いた物語です。
あやかしたちの暮らしぶりは、古い時代の日本と似ています。
女性に自由はなく、高貴な身分の鬼姫も、政治の道具として扱われるのが当然の社会です。
家や親、身分といったものに逆らうことのできない鬼姫たちは、それでも懸命に自分らしく生きていきます。
――ひたむきに。あるいは、したたかに。
鬼姫たちの恋模様であり、歴史の一幕でもあり。
この世界に魂が惹き込まれてしまうような、重厚な物語です。
また、関連作品がありますが、どの順番で読んでも楽しめます。
私は、連載中の『月影を統べる王と天地を歌う姫』の最新話までたどり着いたあと、こちらの作品を読み始めました。「阿の国」の世界にすっかり魅了され、他の時代、他の人物の物語を知りたくなったためです。
どれから読み始めても、また、すべての作品を読まなかったとしても、充分に楽しめます。
けれど、ひとつ読み始めたら止まらなくなってしまう――そんな、どっぷりハマれる物語です。
舞台はあやかしの国「阿の国」。
月夜の王の娘 藤花、彼女の姉 深芳、そして深芳の友人である千紫。あやかしの国に住まう三人の鬼姫たちの物語です。
冒頭から幻想的な世界観と細やかな情景描写にまず魅了されます。そして次にじっくりと描かれていく登場人物の心情と、姫君たちと関わっていく人物との関係性にも目が離せなくなります。
それは幼き恋心であったり、情愛を向けてはならない人への恋であったり、または望まむ婚姻ののちに見つけた心の寄りどころであったりと、三者三様の恋物語は時に美しく、時に苦しく。
大人向けの和風恋愛ファンタジーですが、そこに描かれているのは恋だけではなく、信念、友情、矜持など、そこから読み取れる彼女たちの強さと美しさに胸を打たれました。