純和風テイストの怪奇譚

 古い屋敷に暮らす少女とその祖母の元に、ある日突然訪れた「終わり」のお話。
 困りました。レビューを書きたいのにうまく書けないというか、ちょっとでも踏み込んだ感想になるとその時点で否応なくネタバレになってしまうため、どうしても表層的な部分の紹介にとどまってしまいます。
 ジャンルはホラーとなっていますが、読み手の恐怖をゴリゴリ煽ってくるタイプのホラーではありません。個人的にはオカルトを題材にした現代ファンタジー的なドラマというか、怖さそのものよりもそこに伴う物悲しさや虚無感のような、情緒の面に強く訴えてくる作品だと感じました。といって、別にホラーではない/ホラー成分が薄いというわけではなく、むしろ物語の構造はまさにホラーそのもの、つまりそこに加えられた一捻りこそがこの作品の核であり、また最大の魅力だと思います。
 仄暗く静かなお屋敷の情景に、あからさまに不穏な(なぜか悪い方向へと進んでいるように見える)物語の展開。ところどころに差し挟まれる伏線(というよりも、予感のようなもの)と、そして案の定たどり着いてしまう壮絶な結末。丁寧にホラーらしい物語を組み立てながら、でもその醸す不気味さや不穏さによって揺り動かされるのは、恐怖よりもむしろ寂しさや虚しさのような情動的な側面。ざわつくような不安と滲み入るような静けさを同時に感じさせてくれる、恐ろしくも美しい物語でした。