隠れる場所がある古い家に住むというクダと、その家に住む家族の話。
主人公である女の子と祖母だけが暮らす家に普段は家に居ない祖母の息子が再婚相手を連れてくる所から物語が動き出すのですが、そこまでに書かれたクダが住む場所の説明と女の子の説明に微妙な違和感があり、そこがひっかかりながらも読み進めていたらまさかの展開でした。
そう思い込む事で存在する何かというわけでなく、クダは実際に物理的に存在していたんですね。全部読み終わってから最初に戻って読み直すと違和感部分が全て理解出来てすっきりします。
ちなみに、自分の実家もかなり古くて物が多いんですが、クダみたいな存在いるんでしょうか。足音はしませんが家鳴りは結構します。
古い屋敷に暮らす少女とその祖母の元に、ある日突然訪れた「終わり」のお話。
困りました。レビューを書きたいのにうまく書けないというか、ちょっとでも踏み込んだ感想になるとその時点で否応なくネタバレになってしまうため、どうしても表層的な部分の紹介にとどまってしまいます。
ジャンルはホラーとなっていますが、読み手の恐怖をゴリゴリ煽ってくるタイプのホラーではありません。個人的にはオカルトを題材にした現代ファンタジー的なドラマというか、怖さそのものよりもそこに伴う物悲しさや虚無感のような、情緒の面に強く訴えてくる作品だと感じました。といって、別にホラーではない/ホラー成分が薄いというわけではなく、むしろ物語の構造はまさにホラーそのもの、つまりそこに加えられた一捻りこそがこの作品の核であり、また最大の魅力だと思います。
仄暗く静かなお屋敷の情景に、あからさまに不穏な(なぜか悪い方向へと進んでいるように見える)物語の展開。ところどころに差し挟まれる伏線(というよりも、予感のようなもの)と、そして案の定たどり着いてしまう壮絶な結末。丁寧にホラーらしい物語を組み立てながら、でもその醸す不気味さや不穏さによって揺り動かされるのは、恐怖よりもむしろ寂しさや虚しさのような情動的な側面。ざわつくような不安と滲み入るような静けさを同時に感じさせてくれる、恐ろしくも美しい物語でした。