第10話 初イベント

「昨日はあんまりできなかったからね。今日は一日のほとんどを使って、FAOを楽しむか。」


 僕は、土曜日の朝、自分の作った……と言っても、パンを買ってそれにチーズをのせただけなのだけど、それを食べるとさっそくFAOへ向かうことにした。


 昨日の夜は、まぁいろいろあったから出来なかったんだよね。


「よしっ、ではさっそく。」


 そして、一昨日にログアウトしたところに戻った。


「ん……?」


 ふと、疑問を感じた。どうしてか、いつもよりも人の数とか多い気がする。今日は、何かあるのだろうか?


 あー……そうか。この人の数とかを見ると忘れてしまうけど、まだこのゲームは発売して1ヶ月も経ってないからかな。だから、こんなふうになっているんだろう。


「今日も、防具とか買えないし薬草採取でもしようかな。それまで、モンスターと戦うのは我慢しよう。死んだら持っている物が消えちゃうらしいし。」


 だから、中途半端なまま行っても、全ての武器をなくしてまた1からっていう未来しか見えないもん。


 そして、僕は冒険者ギルドに行って、一昨日と同じ薬草採取を選んで、再び初心者の森に来ていた。


「さーて、さっそく探そうかな。」


 今回は、きちんと頭も使うんだよ。昨日の朝、どうすれば薬草を簡単に手に入れられるかなーって思って調べたんだ。


 その方法は……


「《鑑定》」


『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『ヨモギの葉』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』『雑草』…………


 よしっ、見つけた。


 ……と、まぁこういう方法だ。鑑定でここ付近にある草をすべて鑑定し、ヨモギの葉がどこらへんにあるのかを知ることができる。


「……これ、なんで思いつかなかったんだろう?まぁ、これで、1つは獲得したから依頼は達成だね。」


 そして、もう一度鑑定をしてヨモギの葉を見つけようとしたその時のことだった。


「……………ぁ……」


 どこからか、声が聞こえたのだ。ほとんどなにも聞こえないことを見ると、ここから遠いところに誰かいるらしい。


《聞き耳》


「いたぃ……いたぃ……」


 痛い?ってことは、誰かがここらへんで怪我をしているのか。助けてあげないと!


 そして、声がする方を頼りに走った。そして、膝を怪我をして道に座っているおばあちゃんを見つけた。


「だ、大丈夫ですか?」


 ……って、こんな状態で大丈夫な訳がないよね。そうだ。


《鑑定》


 擦り傷


 僕は、鑑定でおばあちゃんの状態を確認する。擦り傷だった。


 なにか、なにかないかな?スキルも、治すスキルなんて持っていないし薬草も、どういう薬草が治癒効果を持っているのかとかわからないし……


「……そうだ。」


 そういえば、ヨモギの葉ってたしか、止血効果を持っていたよね。それなら、このヨモギの葉で。


 そして、ヨモギの葉でおばあちゃんの膝を止血した。


「………ふぅ。よしっ。」


「ありがとうね、わざわざそのヨモギの葉を。」


「いいですよ。」


「それで、もしよければなんだけど……家まで運んでくれないかしら?まだ、膝が痛むから……」


 今日は、別に時間もあるし、ここにおばあちゃんを一人残すのも良心が痛むし……


「いいですよ。」


 そして、おばあちゃんを僕の背中に乗せた。村につくと、おばあちゃんの案内でなんとかそのおばあちゃんの家に着くことができた。


「本当にありがとうね。」


「いや、いいですよ。」


《イベント おばあちゃんのお願いを達成しました。10ゴールド獲得しました。回復ポーションを獲得しました。》


 ……へ?


「……今、なんて言った?イベントが何かって言っていたよね。これ、イベントだったのか?」


 全然気付かなかった。ってことはあのおばあちゃんはこのゲームの中だけの存在ってことなんだ。このゲームを作った人は、どうやってここまで……


 まぁ、天才は違うってことなんだろうな。


 僕は、イベント達成によって手に入ったインベントリの中の10ゴールドと回復ポーションを見ながらそう考えていた。


「………すげー……」


 僕は誰に伝えるとか言うわけでもなく、小さくそう呟いた。


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こんな僕ですが、VRMMOを始めてみました!〜初心者ゲーマーが世界でも有名なプロゲーマーになっていた話〜 @hina0303

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