第9話 桜さんとラブコメ騒ぎ


えーっと、これが何番だっけ?2番ね。ってことは、あそこの棚か。


「ほいっと。」


 コトンッ


 本の置く音が響く。図書室は静かだからか、より響いて、なんか幻想的。本が並んでいるのを見ると、すごいきれいっていうか落ち着くー……。


 で、これは…………ん?


「んん………!うぅ……!」


 なにか、声が聞こえる。桜さんの声だ。なにか困っているんだろうか?……ってか、なんな卑猥…。


 気になってみてみると、本を置こうとしているのだけど、ぎりぎり届いていなかった。必死なところを見ているのも可愛かったけど、今回は急ぎたいのですぐに手伝うことにした。


「大丈夫?これ、僕が置いておくよ。」


「あっ……す、すみません。」


「いや、いいからいいから。」


 そして、本を置いてあげる。


「あっ、ありがとうございます。本当に助かりました。」


「どうも。」


 そして、仕分けに戻る。


 これは何番?えーっと、3番だからあそこの棚だね。


 で、次は…………………はぁ。


「んんっ……んー…んー…」


 またなにか声が聞こえる。またまた桜さんの声だ。……なにか、さっきよりも卑猥さが増しているような気もする……。


 気になってみてみると、僕を呼ぼうとせず今回は台の上に登って本を置こうとしているらしい。今回は、ぎりぎり届きそうだし、僕の出番はなさそうだ。


「あっ…!!」


「あっ、」


 ぎりぎり本はなんとか置くことができた。しかし、隣の本にあたってしまって本が落ちてきたのだ。


 危ない……!本も落ちてしまっているし、さらに桜さんが慌てて台を踏み外してしまっている!


 僕は、無意識に桜さんに向かって走っていた。そして、なんとか桜さんの身体をおさえ………


 ……ようとしたのだけど、落ちていた本に足を踏み外してしまって僕まで転んでしまった。


 うぎゃっ!


 でも、なんとか四つん這いになって、桜さんの上にいることで本も僕も桜さんに落ちることなく、誰も怪我をしない完璧な結果になったのだった。


 ……って、思った人、いる?


 僕は、気付くと四つん這いになって桜さんを押し倒していた。何をしようとしてたか忘れている僕にとっては、桜さんの色気に勝てず襲ってしまったと思い……


「ご、ごめん!本当にごめん!」


「い、いい…いいですから!!」


 その後の本の仕分けがぎこちなくなってしまったのは、言うまでもないことだろう。


 


『その後の僕』


 家の中のベッドの上で、僕は悶えていた。


 「あー……緊張したー……」


 ばれてはないよ……ね?


 ドアの鍵を閉めるときとか、隣に桜さんがいたから顔が赤いのとかバレてなかったかなー……?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『桜さん視点』


 家の中で、私はベッドで悶えていた。


 うぎゃーー!


 バレていないかな?

 バレていないかな?


 緊張したー!


 私は、図書室から帰って随分経っているのだけど、それでも相変わらず恥ずかしがっていた。


 特に、本を棚にしまうとき同じ棚だったりすると、少し顔をそむけてしまったり。ちょっとさすがにしすぎた気がしたので照れているのがバレていないか心配だった。


 初めてなのだ。あんなにも男の子に顔を近づけられたことも、誤解とはいえ押し倒されたことも。


 照れないはずがない。


 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…


 私は、ベッドの中でまだゴロゴロ転がっていた。


 ドテッ


「いったたたた……」


 でも、楽しかったなー……!!


 ドキドキ…ドキドキ…

 ドキドキ…ドキドキ…


 ……こ、この気持ちってなんなんだろう?男の子に押し倒されて驚いたからこうなっているんだろうか?


 それとも、遥斗くんだからこうなっているんだろうか?


 ………はは……。恋……。そんなこと、ないよね?


 でも、あんなにかっこいい遥斗くんなんて好きになっても、実るはずなんてないのに。


私なんかが、好きになっても良いのかな? 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る