第8話 図書委員の桜さん
「明日は休みですね。かといって、騒いでばかりじゃなくてきちんと勉強もしないといけませんからね。」
「「「「え〜〜」」」」
いつも思うんだけど、なんだよこの会話。小学校の先生と小学生がよくやるやつだけど……。高校になってもするの?
ただいま、放課後。FAOがやりたくてうずうずしているんだけど、この無意味な会話が続くせいで、まだ帰れない……
「あと、横断歩道を渡るときはきちんと右見て左見て右見て、そして手を上げてから渡りましょう。」
「「「「はーい。」」」」
……だから、何?この会話?高校生にもなって横断歩道で手を上げている人なんて見たことないんだけど。
まあ、多分お笑いのために先生とみんなはやっているんだろうけどね。でも、もうちょっと急いでくれー。
「……じゃあ、この茶番はこれで終わりにしましょう。はい、号令しましょう。」
「起立!姿勢!礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
ふぅ、これでやっと帰れ……
「あっ、図書委員さんはここに残っていてください。」
「あっ、はい。分かりました。」
「…………はい。」
なんで今日に限って図書委員が呼ばれるの?
僕は、今の委員は図書委員だ。本を読むことが好きだし、なによりこの図書館の落ち着いている感じが好き。
でも、今はそこじゃないんだ!
でも相変わらず、すごいよね。桜さん。いつも図書委員の仕事を積極的にやっていて。嫌なことがあったときでも一生懸命頑張ってそう……。見習わないとね。
桜さんとは、同じ図書委員の女子だ。クラスから男女一人選ばれるからね。いつも真面目で図書委員のときは本当に働き者。でも、クラスの決め事とかでは目立ちたくないのかあんまり動かないけど。
でも、どこであっても働こうとしない僕が言える立場でもないんだけどね。
「じゃあ、ふたりにお願いしたいことがあるの?」
「なんですか?」
「それはね、毎年恒例の本の整理よ。毎年、一年に一回2年生の一組がランダムでやることになっているの。」
「あっ、前回に先輩がしていましたね。」
なぜにランダム?それなら、2年生全員とかでもいいじゃん。……って、ん?このあとの会話が読めてきたんだけど……
「えぇ、それでそれのバトンがあなた達に渡ってきたのよ。」
「ほ、ほんとうですか!」
桜さんは、嬉しそうに聞いていた。授業中との差が結構あるから、もしかしたら僕と同じで大の本好きなのかも。
「詳しいことは、図書室の先生の方に聞きに行ってね。私は、図書室に向かうよう言ってと呼ばれただけだから。」
「分かりました。」
そして、二人で図書室に向かうこととなった。時間が掛かりそうだと落ち込んで、開き直ると僕は桜さんについていった。
「あっ、よく来ましたね。じゃあ、さっそく本の整理について説明しますよ。まず、方法からです。」
ガラガラガラガラ…!!
図書委員の先生がそう話すと同時にでっかい棚をこっちに持ってきた。下に車輪があるから、それほど大変ではなさそうだった。
「まず、仕分けの方法は分かりますよね。この本の橋に貼ってあるラベルを見るんです。それで、これ全部をそのラベルのところに戻していただきたいんです。」
「ぇー……。」
棚というから案外少ないんじゃないかと思う人もいるだろう。でも、なぜか不運なことにこの棚は特注品でかなりの大きさだ。だいたい、本100冊くらいはあるのではないだろうか?
読むのならめちゃくちゃうれしいけど、仕分けるのはちょっとなー……
「じゃあ、私は帰りますから。終わったらきちんと鍵をしめておくように。」
「あっはい……。」
そして、颯爽と先生はどこかに行った。無責任……。
「ど、どうします……?」
「……まぁ、とりあえず仕分けしましょう。私は上の本の方から仕舞います。遥斗くんは………ゴホンゴホンッ!なんでもありません。あなたは下の本からしまっていただけませんか?」
………きのせいだよね?なんか、遥斗くんっていう声が聞こえた気がしたんだけど?まぁ、なんでもないって言ってるしいいか。
でも……
「いや、それなら僕が棚の上の方から仕舞っていきますよ。僕の方が背が高いし、桜さんの負担が減りますでしょうし。」
「いや、でもそしたらあなたのほうが……」
「いやいや、桜さんは女の子でしょ。男の子の僕の方が力強いんですから大丈夫ですよ。頼ってください、同じ委員会同士。」
「……そ、そうですね。ありがとうございます。」
そして、早速仕分けに入った。
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