第16話 木島尚之介 その九
腹にのしかかるような息苦しさで、尚之介は意識をとり戻した。
混濁する頭が鮮明になるにつれ、腹の違和感が激痛へと変化していく。
天国にしては刺された腹が痛いし、地獄にしては生ぬるい。どうやらまだ現世にいるらしい。
あの状況から生還したということは、犬養が手加減してくれたということか、あるいは未来にやってきて高度な医療を受けたかのどちらかであろう。
前者がましか、後者がましかはわからない。どちらにしろ、目を覚ませば大変な人生が待っている。
しばらくまどろんでいたが、やがて名前を呼ばれた。麻衣の声である。ここがどこであれ、あの女がいるのであれば退屈だけはしないだろう。
ふたたび呼ばれて、尚之介は目を開いた。
夜明け前に灯る 植木田亜子 @ccb43601
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