堂島エージェンシーに勤める矢木さやかは、諸外国から著名なピアニストを招き、コンサートを計画するものの、彼らには様々な生い立ちや辛い過去があり、そして音への強いこだわりを抱え、時には無理難題をさやかに押し付けてきます。さやかは諦めることなく人脈を辿り、東奔西走を続けますが、ピアニストたちが求めている音を出すためには、「エヒトクラング」と呼ばれる調律師の協力が必要になります。エヒトクラングこと蔵野江仁は終始さやかには冷たく、突き放したような態度をとっていますが、そこには彼なりの音楽への強い想い、そして音楽に関わる者への愛情が感じられました。
作者のピアノに関する膨大かつ深い知識、そして人間の心理描写、そのどれもがこの作品に深みを与え、読む人達を物語の世界へグイグイと引き込んでくれます。
また、作品に登場する音楽家たちは、いずれも音楽を徹底的に追求し、音への強いこだわりがあります。作品を読みながら「本物の音」を追い求める音楽家たちの熱い想いに触れ、見事に表現出来た時の喜びを一緒に味わってみてはいかがでしょうか。
〝エヒトクラング〟はドイツ語で、本物の音という意味です。
ピアノの調律にまつわるお話です。章ごとに違うエピソードの連作になっています。
調律によって、ここまでピアノが変わるのだということが分かります。
蔵野。カリスマ調律師。変人気質なところが面白いです。
さやか、若くて無駄に元気のいい女の人。
などなど、キャラがいいです。
ピアノ好き、必見です。音の出ない小説での音楽表現、うまいです。
話の区切りが鍵盤なのも面白いです。
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クラシック知識。ピアノ以外の雑学もちらほら入ってて勉強になります。
文章うまいです。
海外事情も詳しいです。リアリティーあります。
蔵野に振り回されるコミカルな話。
初来日で不評だったピアニストからのエピソード。
受刑者たちへのコンサート。
などなど、面白いお話がいっぱいです。