第6話
6.
!月〇日
アリアに、銃の撃ち方、スニーキング、トレッキングのやり方を教えることにした。それはアリア自身が望んだことではあるが、これは俺も強く勧めたことである。
見てみたくなったのだ。教わった格闘技を極致まで磨きぬいたアリアに、俺の持てるすべてを教え込んだらどこまで伸びるのかと。
追記
軍内部に革命派への同調の動きがあるとのうわさを聞いた。再度現役復帰しなくていいのかを中将にとう。鬼気迫る勢いでかのアンドロイドを鍛え続けろといわれた。言われずともそうするつもりだ。大切な我が子なのだから。
☆月〇日
最近めっきり寒くなった。吐く息が白いのはざらだ。訓練は順調だ。アリアに教えることがなくなる日も近いのかもしれない。
☆月☆日
ついに、ついにアリアはやってのけた。アリアは完璧だ。俺の教えられることは全て教えた。アリアは俺の知るすべてを学んでのけた。アリアは自ら学ぶということを学んで見せた。
あとはもう、アリアは教わるのではなく、自ら学ぶべき主体となった。そのことに名残惜しさを感じる。寂しさも。だが我が子の進歩は喜ぶべきだ。
「俺に教えられることはもうなさそうだ」といった。「私は、父さんと一緒にまだまだいろんなことを学んでいきたい」といってきた。
一緒に学ぶ。そうだ。これからは教え教えられの関係ではない。これからはともに一緒にいろんなことを学んでいくのだ。とりあえず二階の書斎の本を制覇するところから始めようか。
中将に連絡した。アリアに教えられることは全て教えたと。これからはともに学んでいくことにしたいといった。中将はしばらくの沈黙の後、君は、君の任に励みたまえ。ご苦労だったと伝えてきた。幸福に漂う意識のまま、革命派は最近どうなったかを聞いた。君の気にすることではないとぴしゃりと跳ねのけられた。まあ、それはそれでいい。中将がそういうのならそうなのだろう。
☆月!日
アリアとともに古い小説を読む。国に殉ずるか、それとも愛に生きるかを問う作品だった。
感想を話し合う。アリアは愛に生きるのが正解だといい、俺は国に殉じるのが正解だという。交わらぬ議論。議論は平行線のままだった。だがそれでいい。子が親と同じ価値観である必要はない。
☆月・日
アリアとともにクラシックを聞く。実にいい演奏だった。だが、アリアには退屈だったようで途中でスリープモードに入ってしまった。それがまたかわいい。ベッドに寝かしつけてやったところ、俺の服の端をつかんで離さない。仕方がないので一緒に寝てやった。
◎月〇日
今日雪が降った。ともに雪だるまを作る。アリアも最初は作り方がわからずおろおろしていたが、じきになれると俺より大きな雪だるまを作った。悔しいのでより大きな雪だるまを作ったら、アリアもそれに負けじとさらに大きな雪だるまを作った。
結果ロッジの周りには大小多くの雪だるまが乱立することになったが、それもいい思い出だ。
◎月□日
久々にアリアとともに顔役のところに顔を出す。もうすぐ新年なので、宴をやっていた。
昔よりずっと親子らしくなったといわれた。そうだろう。俺たちはずっと親子だ。
来年はどうしようか。中将に申請して、どこか遠くに旅に出るのも悪くないかもしれない。
◎月△日
今日は今年最後の日だ。せっかくなのでウッドデッキに出て小川を眺めながらアリアと話す。これまでのこと、これからのこと。「俺はお前に出会えてよかった」とアリアに伝える。ほおを緩めるアリア。「私も父さんに出会えてよかった」といってくれた。
俺は今、とても幸せだ。こんな日がずっと続けばいいのに。
どこか遠くで、雷の落ちたような音が聞こえたことが気がかりだ。明日確認に行ってみるか。
☆月×日
さいあくだ しゅとでかくめいがおこったとのれんらくがはいった
ちゅうじょうはころされたと。 おれは おれはどうしたらいい。
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