第3話

3.

〇月◎日

今日は、アンドロイドを連れてロッジの周りを見て回ることにした。というのもここ数日、荷物の片づけに忙しく、ろくに周辺を探索できていなかったからだ。だが、ようやく荷物の片付けも終わり、人心地ついたのであたりを探索することにしたのだ。


まずロッジからだ。ロッジはロッジという名前から連想されるように木造ではなくレンガ造りだった。それが雰囲気を壊すということもなく、焦げ茶色のレンガの色は周囲の木々とマッチしており、三角屋根と相まってまるでおとぎ話に出てきそうな雰囲気だった。


また、楢をふんだんに使った内装も、これ見よがしの派手さはないものの凝ったものだった。リビングの床は精緻な寄木細工で組まれており足を踏み入れるのがもったいないぐらいで、広く取られたテラス窓からは雪解け水が流れる小川へとせり出したウッドデッキにそのまま出られた。


さらに二階にはステンドグラスの見事な書斎があり、世界の名著と呼ばれる本が所狭しと並んでいた。さらにその隣は防音室となっており、中には見事なオーディオ機器と世界の名曲全集、オペラ、ミュージカルの数々が置かれていた。


その上ロッジの脇には家庭菜園には十分な大きさの畑と井戸があり、季節ごとに異なる味覚を楽しむことができるようになっていた。また、そのわきには鶏小屋があり、その中には太った牝鶏が七羽もいた。総じて退役大尉に与えるにはもったいない邸宅で、それだけ軍上層部がアンドロイドの情操教育に力を入れていることが見て取れた。


アンドロイドは特に二階の書斎や防音室に興味があるようで、その無機質な目をまじまじと見開いていたことを覚えている。軍の中しか知らない身としては、やはりそうしたものが物珍しく見えたらしいと少しシンパシーを感じた。



〇月・日

今日の一日はアンドロイドに新聞を取りに行かせるところから始まった。無言で差し出される新聞に、「そういう時は何か一言付けて渡すものだ」と説教をした。そういう何気ない気遣い、何気ない思いやりが人と人とをつなぐ。社会を学びたいならまずはそういうところからまず始めるんだと。


私には社会というものがわからないと返された。

これから学べばいいといっておいた。それでも足りなければ世界の名作、名曲から学びたまえとも。


作品からだけでは世界は学べない。だが経験と合わせれば何かは学べるのではないか。


是非とも学んでいってほしいものだと切に願う。こう書くと俺があのアンドロイドの身を案じているようで、我ながらちょっと面白い。


新聞の内容は、革命派が勢力を伸ばしているとのことだった。これからこの国はどうなっていくのだろう。



〇月!日

今日はアンドロイドとともに畑をいじった。やけにまじまじと空いく鳥をアンドロイドが眺めているのが印象的だった。


岩盤内の秘密基地では鳥を見かけないからただ珍しいのか。それとも人間と同じように空の彼方へ思いをはせたりするのだろうか。俺にはわからない。


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