生まれたよ

今年の梅雨は長く、こう水温が上がらない日が続くと、蓮は成長しないし、メダカの新陳代謝が落ちて消化不良気味になるのが心配だ。


産卵は朝に行われるが、水温が低いと遅くなるようで。

今か今かとそわそわしたオスがメスにつきまとう日もある。


と思えば、帰宅後にエサをやっていると、急にスイッチが入ってメスにアプローチをし出す日もある。


いいから、食えよ。

よそ見してる間にメスに全部食われちゃうぞ。そんなだから、いつまでもシュッとしてるんだぞ。


求愛行動は初めて見たが、メスの行手を遮り、光を反射させながらギラっと腹を見せる。闘牛士のマントみたいに素早く腹を見せる。


「どう、どうこのおれの腹、ムラムラしない?」


はっきり言ってまぶしい。

人間でも、うわなに今の、まぶしっ、ってなる。


「べつに。今、朝じゃないし、そういう気分じゃない」


怒るでも呆れるでもなく、それを無視してエサを漁るメスもすごいのだが。


ちょっと滑稽。




この先どんな結果が待っていようと、自然にはとめどない成り行きがある。せいぜい二匹のメダカたちを生かす工夫と、人間の不注意で事故を起こさないようにはしたい。


それ以上は何もしないことが、まだ少しは自然に近い過ごし方なんじゃないかと思う。

干渉されないこと。人の気配がなく、日の出と日没とともにある営み。


ボウフラ投入もしんどいし。


7月5日、採取していた卵から一匹目の子メダカ(針子)が生まれた。オスが来てから13日目のことだ。

受精は成功していたことがわかったが、一ヶ月くらいかかった感覚だ。

短いメダカの命の時間は一日一日が長いものに感じる。毎年の夏でさえ、一度しか来ない夏だということを普段、私は忘れがちだ。

まだ3ミリ程度のホコリと見紛うガラス細工のような稚魚の動きは、オトナとおんなじだった。


あとはメダカに任せ、このあたりで筆を置こうと思う。


みなさまもどーかよい夏をお過ごし下さい。



2020/7/5

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妄想飼育日誌 日竜生千 @hirui

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