あといくつ食べれば

ホテルの時期オーナーである結構ワガママな女性の気持ちが分からない彼氏の話。
食べた物の記憶を手に入れれる能力を持っていたとしても、それは他人の記憶を読み取っているだけで日記を見ているのと変わらないんですね。それでは知識が積み重なるだけで経験値にはならない。実際にその身で体験して初めて自分の物に出来るんです。
というか、色んな記憶や知識を詰め込みすぎているからこそ、彼は感情が振り切れて無になっているんじゃないでしょうか？一度全てを捨てて一からやり直してみるといいのかもしれません。
人の心って難しいですよね。

　ホテル最上階の高級レストランで、激しい口論をする若い男女のお話。
　ぱっと見はただのカップルの痴話喧嘩、ちょっとした日常のワンシーン……かと思いきや、といった筋書きの作品です。およそ3,000文字というコンパクトな尺の中、シンプルながらも綺麗にまとまったストーリーラインが魅力的でした。
　インパクトの強い会話の場面から入って、中盤で詳細な事情を明かしつつ不穏な空気を匂わせ、最後に急転直下のひねりを加えて落とす。流れが綺麗で、くっきりと浮き立つようなわかりやすさがあって、真っ直ぐ滑らかに読み通せたお話でした。
　若干ネタバレ気味の感想になってしまうのですが、結び付近の展開の味わいというか、こ…続きを読む